英雄と魔法生物
(幻 SideS)
手が触れる
戦闘の最中、偶然モンスターの身体に手が触れた
高波が押し寄せるかのように何かが入り込み、意識を巻き込んで行く
身構える暇も無く意識が飲み込まれた
視界に映る蒼い色
ガラスの向こうに広がる蒼い世界
ゆらゆらと歪む蒼い色の中をゆっくりと魚が通り過ぎていく
―――海の中
目に見える光景にそんな言葉が浮かび上がる
ゆっくりと視界が動く
広く無機質な室内と、床や壁を流れる水
水が跳ねる音がする
何かが近づいてくる音
―――生き物の気配?
気配が止まる、ゆっくりと振り返った
ボンヤリとした意識の中で身体が動く
目の前にある巨大な生き物
腕らしきものを避け、身体を踏み台に距離を置く
足に触れる感触が遠く頼りない
無意識の行動で、スコールは武器を構えた
人の声が聞こえる
様々な言葉が声が混ざり合い、ざわめきとなって耳に聞こえてくる
―――水の幕が張ったような遠い音
分厚いガラスで遮断された部屋の先にモンスターの姿
モンスターを取り囲むように設置された機械と機材の数々
モンスターを凝視する視線
両手が軽やかに動いている
ガラスの向こうで作動する機械の数々
モンスターの身体へと機械の先端が潜り込んでいく
―――断末魔の声が聞こえた気がする
モンスターの体内から、光を反射する“何か”が取り出された
ボンヤリと霞がかった視界
左右に見える人影
誰かに話し掛けられた気配がする
ゆっくりと唇が動く
スロー再生された音の様に、引き延ばされた声が零れる
遠くで他人が交わす会話の様にスコールは感じていた
喧噪と静寂
人々で溢れかえる部屋と誰も居ない無人の部屋
同じ場所の違う光景が交互に現れる
くるくると入れ変わり、流れ込んで来る光景――情報――の数々
悲鳴が聞こえる
海の中、蒼い世界の中にただ一人佇む人影
嘆きが聞こえる
白衣を着た男達の姿、まくし立てるように話す人々を見つめる人影
そして、後悔の声
目の前に在る輝く物体
―――モンスターの体内から取り出されたモノ
ソレを手に何かを語る男の姿
―――視界が上下に揺れる
男が語る言葉に何度も頷き同意する
―――体温が上昇している、軽い興奮状態
『さっそくその魔力を注入してみよう』
―――男の声が強く響いた
攻撃が決まる
船の上にのしかかるように身をのり出したモンスターへとガンブレードを振り下ろす
硬い物を切り裂く感覚を感じた様な気がする
モンスターが叫び声を上げた
ふいにクリアになる意識
モンスターの身体から、光のきらめきがこぼれ落ちた
次へ そのころのラグナ
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