英雄と魔法生物
(回答 SideS)


 
空中に舞い散る光の輝き
―――魔力の結晶、魔法の源
深く刻まれた傷から零れ落ちる力の源
苦しみの声を上げるモンスターと視線があった様な気がした
「勝てそうだよっ」
言葉と一緒に新たな攻撃が飛ぶ
傷を広げる様に正確に繰り出される攻撃
空中に舞う、光の煌めき
―――力の源、命の源
スコールの身体に光の欠片が触れる
『判決を………』
低い声が聞こえる
『私の処遇を………』
苦しげな声が聞こえる
『残されている者達に救いの手を………』
絞り出すような声が聞こえる
目の前のモンスターが腕を伸ばす
攻撃を仕掛ける為に伸ばされた筈の腕は………
『決断を、解放を………』
横合いから鋭い刃が飛ぶ
モンスターが上げる声と再び降り注ぐ光の破片
深く突き刺さる刃に傷が広がる
流れ出してくる体液―――赤い血の色
無意識の内に身体が動く
腕を伸ばすモンスターへと攻撃を仕掛けている
身を捩るモンスターの身体から零れ落ちる魔力の煌めき
スコールへと向けられる視線
何処か悲しげで救い求める様な、そんな視線
『安らぎを、苦しみからの解放を』
腕が伸ばされる
まるで縋り付くかの様に、腕が伸ばされる
アーヴァインとセルフィの声が聞こえる
何か慌てている様な、危険を告げているような?
『悪気無き罪人達に判決を』
目の前にモンスターの身体が迫ってくる
『適うならば、安らかな眠りを―――』
モンスターが音を立てて崩れた

幻の様に消えては現れる幻
見たことも無い景色
見たことも無い風景
次々と入れ替わる場面
―――モンスターに託された記憶
予測、推測、そして一つの仮定
繰り返される実験
実験の証明
集ってくる人々
そして、自らを使った人体実験

水しぶきを立ててモンスターが海中へと沈んでいく
スコールは、船縁にかけより海を覗き込む
モンスターの身体が海中へと深く沈んでいく
微かな身動ぎ
身体から次々と零れていく光と体液
「倒した?」
「みたいだね」
背後から喜びの声が聞こえてくる
スコールの視界の中で、徐々にモンスターの動きが止まる
スコールの耳に、訴えかける必死の声が聞こえた

モンスターを倒し明るい空気が漂う船上で、スコールは1人海を見つめていた
戦闘の最中脳裏に脳裏に浮かんだ幻の数々
意識の中に入り込んできた感情、感覚
繰り返し幾度も見えたのは海の中の光景
モンスターが訴えるように指し示した方角は………
広大に広がる海が見える
不可解な動きをしていたモンスター
嵐を引き起こしはするが、積極的に人を襲ったという報告は聞いていない
………………
考え込むスコールの視界の端に、何かが見えた
押し寄せてくる巨大な波しぶき
凝らした目に遠く水柱が見える
何があった?
津波に気付いた船員達の慌てる声が聞こえる
巨大な水柱が消えていく
勢いよく津波が駆け抜けていく
あっという間に訪れる静寂
「飛空船?」
水柱の方角から空を飛空船が飛んできた

 
 
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