英雄と墓標
(情報 SideL)


 
「セントラの施設?」
「そう、ガルバディアの大地に埋もれていたそうだ」
書類へとサインをしていたラグナの手が止まる
キロスの言葉に辺りへと視線を向ければ、すでに周知の事実なのか、他の奴等の反応は無い
まぁ、それは良いとして、セントラの施設か………って、
「………ガルバディア?」
あんまり聞きたく無い単語が聞こえた気がする
「ああ、ガルバディアだそうだ」
皮肉気な笑みを吐いて、キロスがはっきりと断言する
………ガルバディア、か
発見したというセントラの施設が、どんなモノかは知らないが、下手にガルバディアがその技術を取り込もうとすれば、面倒な事になるかもしれねぇな
まぁ、たいていああいう奴は手に負えないってのが相場は決まってるけどな
「今現在、ガルバディアを国を挙げて学者達と共に賢明の発掘作業の最中という話だ」
そりゃ、大変だな
そう言うはずだった言葉が止まる
「発掘作業、だって」
叫びかけた言葉を押し殺し吐き出された、低い声
セントラの施設、そして発掘という言葉
なにより、埋もれていたという言葉
連想される一つの………
ラグナの表情が強ばる
………まさか、そんなはずは無いよな?
心の中で言い聞かせるように呟き、心を静める
「ラグナ君?」
「いったいどこだ?」
声が強ばる
知らず握りしめた手の中のペンが軋む
「場所なら―――」
キロスが告げた場所は
―――やっぱり、あそこか………
痛い程の衝撃を引き連れてきた

―――墓参りに行ってくる
書き置きを残して逃走したのは、今朝方のこと
向かった先はいつもの様にガルバディア
ラグナは、人気のない森の中を車を走らせる
目的地は西の端、人里離れたガルバディアのはずれ
書き置いてきた言葉に偽りはない
あの場所へ俺は墓参りに行く
ガルバディアの地に埋もれていたというセントラの施設
………埋もれていたものがなんらかの表紙に出てきた訳じゃないことを
アレは初めから土の中へと埋められていた事を俺は知っている
頭の中へと思い浮かぶ光景
静寂に満ちた小さな村の姿
そして………
ここ最近幾台もの車が通った跡が道に残っている
常日頃は人通りのほとんどない場所だった
ここにこんな跡が残ってるって事は、確かに人が押し寄せているんだろうな
あの、静な場所に
キロスから話を聞いたあの日から、徐々に鮮やかに長い間一度も思い出す事の無かった記憶がよみがえってくる
海から吹き付ける強い風
風が揺らす鐘の音
そして
崩れ落ちた天井、傷ついた壁
辺りに広がった血の色
浮かんだ記憶に気を取られ、よけいな力がかかりハンドルがきれる
車体が大きく揺れる
慌ててしっかりとハドルを握りしめ、前方へと目を向ける
緩いカーブの向こうに見える光景
閉ざされた小さな村の姿
目に映る光景は、記憶の中のソレと変わることが無かった 
 

 
 
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