英雄と墓標
(主 SideS)


 
扉は開かない
調査を開始する為に開けなければならない扉は依然として開かなかった
中へ入るということだけなら、手っ取り早く扉を壊してしまえば良い
だが、その扉さえもセントラの遺産であるならば、壊すことさえも躊躇いが生まれ、未だ踏ん切りは付いていない
中に入れなければ調査は始まらない
調査が始まらなければ………
この周囲は自然は多いが、モンスターの姿を目にする事はあまり無い
モンスターが現れたとしても、ソレはたいした驚異ではなく
つまり、SeeDであるスコール達の出番はない
「あそこ、まだ人は戻っていないみたいだぜ」
村を一回りして来ると言って出ていったゼルがもたらす報告
―――丘の上の家の事
それには毎回変化が無い
扉が開かない限り、集めることの出来る情報は村人の話以外に無い
一部の学者達は、冷たくあしらわれながらも今日も家々を巡っている
その中で、自然に生まれた期待
あの最後の家の住人、その人ならば何かをもたらしてくれるかもしれない
いずれ戻るという住人の存在に期待が生まれるのも仕方が無いのかも知れない
だが、本当に戻ると思っているのか?
セントラの施設、この話を聞けば必ず戻ってくる、とそうは言うが
戻る事の出来ない状況だとしたら?
ガルバディアという土地で幾度も起きた戦争
世界各地で、ついこの間まで続いていた争い
三十年近く前にここを出たきり戻らないという相手が、争いに巻き込まれず無事に居るという保証は在るんだろうか?
誰もその事を口にはしない
解っていて口をつぐんでいるのか、それとも本気で気が付いていないのか、スコールには判断が出来ない
そして、解っていながらスコールも口をつぐむ
何故かその言葉を口に出すのは禁忌の様な気がして………
また風が、鐘の音を運ぶ
風が吹く度に響く鐘の音は村中に届く
鐘の音が響く度に村人は手を休め見つめる、村の外れに在る墓地の方を
それは、遙か昔から続くという村の習慣
どこか静寂が支配した村の情景
もの悲しく感じる光景は、あの鐘の音が作り出しているのかも知れない

「おい、あの家誰が居るみたいだぜ」
ゼルの言葉に、丘の上に在る家へと足を運んだのは先ほどの事
もうずっと昔、この家の住人が出て行った時から誰も住んでは居ないと言われた場所
だが、この村の長は
『彼が生きているならば、そう遠くない日に訪れるでしょう』
そう言っていた
その言葉はようやく現実になったらしい
ゼルの言葉を受け、ゴッパスは同行しようとした学者達を制し、スコールとゼルの二人を伴い家へと向かう
確かに家の中からは何かの気配が伝わってくる
何気なく見上げた二階の窓に人影が過ぎる
ゴッパスが中の人へと訪問を告げる声を上げた
 

 
 
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