(墓参り SideL)
スコール達と別れて、広大な墓地を歩く 目的は墓参り この言葉に嘘はない ガルバディアの人間があの地を探索したところで、何も発見出来ないことは良く知っている あそこには何も無い 何一つ残っていない あの場所で命を落とした人々は、彼等の手でずっと昔に埋葬されている ラグナは幾つもの花束を手に、墓地を歩く 今更、ガルバディアの奴等があそこに入ったところで、彼等が身につけていたボタン一つ出てはこない 「んな事は解ってるんだけどな」 これから施設の中を調査、探索するというゴッパスの言葉に幾度中に入るなと言いかけただろう もはやあそこには何も残っては居ない あの場所で死んだ人の記憶も思いも、何一つ残っては居ない 遺体が埋葬された墓はこの先に在る だが、あの場所は確かに死者が眠る地 あの場所には誰にも足を踏み入れて欲しくなかった ラグナは、一つの簡素な墓の前で足を止める 「いつかはこんな事になると思ってたさ、けどな、俺が生きてる間は大丈夫だと思ってたんだよな」 手向けの花を一つ 隣へ並んだ墓へも一つ 短くはない時間目を閉じラグナは祈りを捧げる 「………いろいろあったが、良かったって思ってるぜ」 言葉を風がさらう 吹き上げるような風に目を細め、風に押されるようにラグナは歩き出す 墓地の奥へ やがて現れる歳月を重ねた幾つかの墓石 中央に配された数基の前で膝を折り花を捧げる 頭を垂れ、長い時間をかけ捧げられる祈り そうして、ラグナは立ち上がりきびすを返す 歩きながら幾つも語りかける言葉 尽きることのない報告 この地を後にしてからの自分の人生 いろいろあるが、それでも今は幸せに暮らしていると言葉を綴る 「………今度スコールも連れてくるか」 墓地を出るラグナの言葉に、花の香りが匂った |