(崩壊 SideS)
気が付かないはずがなかった 破壊の跡が新しいことに 通り過ぎてきた数々の部屋の様子と、最後に見た部屋の様子は明らかに雰囲気が違っていた 辺りに刻み込まれた傷跡 高温の熱に溶けた様に波打つ床や壁 辺りへと飛び散った破片の一つに目が止まる 欠片の一部に刻まれた文字 ―――ガルバディア 明らかに新しい破壊の跡 ここの破壊が新しいという証拠 「………おい」 小さな声と共に腕をつつく感触に、スコールはゼルを見る 「ここって………」 ゼルの言葉に、スコールは小さく首を振る 知らせてはいけない 何故か、強く思った感情 「………だよな」 小さく呟き、ゼルがそっとスコールの側を離れていく 部屋の様子を眺めていた学者達が一所に集まっていく まるで墓標の様に積み上げられた瓦礫の印 目立つ形で築かれたソレは、本物なのかも知れない だが……… スコールはゆっくりと首を振る ここで何が起きたのかは別に知る必要はない どうせ、この状況なら調査が出来ないことに変わりはない ―――知らなくて、良い ―――知りたくはない 学者達が調査の打ち切りを話している 既にここで調べる事はないという結論 どこか躊躇いを見せる表情は、それだけが理由では無いということだろう どこまでも死の影がつきまとう場所 何も無いが、それ故以前あった事を意識させる場所 目に見えた発見が無いのなら、そっとしておきたい きっと誰もが思っているだろう思い それと……… スコールはゆるく頭を振ると部屋の奥へと歩き、何気なく半ば欠けた柱へと手を触れた ――― かすかに聞こえた音 何かの電源が入る様な、そんな音 弾かれたように辺りを見渡したが、スコールの他には誰も気が付いた様子は無い そっと手をついた壁の内側からかすかに感じる振動 ―――動き出した!? 「―――っ」 警告の言葉を発しようとして、躊躇う 機械が動き出した―――まだこの施設が生きているという事を話しても良いのか? スコールが僅かな躊躇いを見せている内に、彼らが足早に部屋を出て行く 完全に作動するまでに抜けられるか? 足早に歩く彼らの足取りにほんの僅かな期待を抱いたとき 機械音が止まる そして、耳障りな音が響く 次第に大きくなる不穏な音 止まった機械音の代わりに、施設全体に嫌な揺れが生まれる 「おいっ、崩れるぞっ」 振動に気が付いたゼルが叫ぶ 一瞬彼らの動きが止まる スコールは足早に彼らと合流を果たす 「急げっ」 ゴッパスの鋭い声が飛ぶ 弾かれたように走り出す人々 スコールは背後を一瞬振り返り、彼らの後を追った 「………無事か?」
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