英雄とセントラの謎
(資料)
セントラで過去に起こった出来事を一番良く知っている国は?
セントラの資料を一番保持している所は?
セントラというのは特殊な場所
古代セントラという魅力的な文明が起こった場所と知っていても、学者達でさえ行くのを躊躇う様な土地
気軽に行ける所じゃない
“セントラ”に関する私的な資料なんてほぼ存在しない
あるとしたら、祖先の誰かが住んでいた、なんて頃の過去の時代の簡単な地図や日記位なものだろう
詳しいことを知りたいならば、公的機関に問い合わせるしかない
エスタ国立図書館
巨大な建物の片隅に、セントラを扱ったコーナーが設けられている
“セントラ”という国の伝説
遙か昔彼の地に伝えられていたというおとぎ話
近代セントラの歴史書
セントラに関する様々な本が連ねられている
そのセントラのコーナーの中で一番の種類を誇るのがセントラ大陸の地図
様々な時の地図がずらりと背を並べている
様々な時とは言っても本当に古いものは一つもない、ここにあるのは古くてもせいぜい50年前のもの
だが並べられた地図の数は異様に多い
理由は裏表紙に書かれた発行年
地図の発行年月日は年単位なんてものじゃなく、下手をすれば月単位のものまである
並べられた地図から読み取ることができるのは、それだけ頻繁に地図の内容が書き換わるということ
それも、以前の地図が使えなくなるほどの変化
そこまで読み取ることの出来た者は幸いだ
おぼろげながらセントラの危険を知ることができるだろう
もう一つこのセントラのコーナーには特徴的なものがある
それは分厚い“モンスター図鑑”
セントラに住むモンスターを納めた図鑑だ
モンスター図鑑自体は、どんな土地のものでも必ず1種類は存在している
それ自体は特に珍しい事じゃない
問題なのは、その内容
モンスターの性質や攻撃方法、詳細を書き記した箇所に書き記された“不明”という箇所の多さに驚かされる
そして書き込まれたアドバイスはそのほとんどが躊躇うことなく逃げる事を勧めている
中には「出会ってしまったら覚悟を決めろ」と書かれたモンスターまで存在している
セントラへ行く前にこの図鑑に目を通した者は、果たして幸運なのか不運なのか
もし興味本位でセントラへ行きたいという者がいるなら、この場所へ連れてくれば良い
エスタで囁かれる事柄の一つ
確かに、これはセントラへと行くことを思いとどまらせるのに有効な手段だ
そして、今日もある光景が繰り返される
どこかの国からの旅行者と、エスタ観光局の人間
セントラへ向かうならばその為の資料も必要でしょうと、巧みな話術でさりげなく男の気持ちを誘導する
手にしたモンスター図鑑を男の手が捲る
そして、セントラへ行くことを強固に希望していた旅行者は現実の欠片を目にし、セントラ行きを断念した
数日後、セントラの地図とモンスター図鑑が1冊ずつ貸し出された
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