英雄とパンドラ
(状況 SideL)


 
ルナティックパンドラには、兵士が常駐している
壊れたとはいえ、ルナティックパンドラは“月の涙”を発生させるなんていうシャレにならない装置だ
適当に放置しておけば何者かが悪用しようと近づいてくる可能性がある
その為の兵士の常駐だったが
ラグナはキロスとウォードの3人で軍に先行しルナティックパンドラへと向かっている
そう時間をおかないうちに兵士の一団がラグナ達を追ってくる手はずになっている
「それで今の状況はどうなってるんだ?」
常駐の兵士達から入っている筈の連絡も確認しないうちに飛び出してきた
『モンスターはゆっくりとした動きでルナティックパンドラの周囲を移動しているようだ』
「そのまままっすぐに突入はしていないんだな?」
ルナティックパンドラに常駐した兵士から、モンスターの集団が現れたという情報が入ったのはつい先程の事
だが、実際にルナティックパンドラへ移動する迄にはどうしても時間が掛かる
着いた時には全てが終わっていたなんていう事態は避けたい
『どうやら、留まっているといった感じらしい』
ゆっくりと一定の範囲を移動している
ルナティックパンドラとは違う目的があるのか
それとも、モンスターが集まるのを待っているのか?
間に合わないなんて事は考えたくは無いが
“間に合わない”ってのはどんな状況に間に合わないのかがはっきりしていない
なんの為に集まっているのかが解れば良いんだろうが
「モンスターに質問しても答えちゃくれねーしなぁ」
会話が成り立たない
それ以前に、意思の疎通が成り立たない
それよりも………モンスター達が何故集まっているのか、解ってるかどうかも怪しいよな
モンスターと意志を通わせたいなんて事は絶対に思わないが、話が聞ければ………と思ったことなら数回ある
「緊急事態に備えてラグナロクを待機させる様に伝えてある、アレならば連絡が来てからでも遅くはない筈だ」
「手回しが良いな」
確かに、ラグナロクならルナティックパンドラの位置まで僅か十分程度で攻撃を行う事が出来る
「でもま、あんまやりたくないけどな」
ラグナは強くアクセルを踏み込む
身体に軽い衝撃を感じる
『確かに攻撃は間に合うが、歓迎出来ない事態になるな』
派手な事をすれば、どこかからか嗅ぎつけた他国の奴等が確実に口を挟んでくる
「とりあえず急ぐぜ」
ラグナ達は可能な限り急いでルナティックパンドラへと向かった

「目立った動きは見受けられません」
ルナティックパンドラ監視所
名前の通りルナティックパンドラを監視する兵士達の常駐施設
ルナティックパンドラを囲む防御装置の外側、少し離れた場所に位置するこの施設には変わった様子は見受けられなかった
「モンスターは、今は向こうの方か?」
ルナティックパンドラの周囲をゆっくりと移動しているというモンスターの集団には、幸か不幸か出くわさなかった
「ルナティックパンドラ自体に異変はあるのかな?」
「現在、ルナティックパンドラ内の全領域を調べる事の出来る状況にありません、ですから明確な回答は出来かねます」
ルナティックパンドラの中の様子は当然確認しなきゃならない事だが、調べてる最中にモンスターが襲ってきたなんてことになったらコトだからな
「とりあえずモンスターの方をどうにかするか」
ラグナはマシンガンを手に再び外へと歩き出す
『モンスターの様子を確認してから攻撃するんだぞ?』
にやりと笑いながらウォードが言う
「覚えておくけどな」
それこそ、モンスターの出方次第
当然の様にキロスとウォードがラグナの後を追う
車に乗り込む際に誰が運転するか少し揉めて、来た方角とは逆方向へ向かい車が動き出す
「あれほどのモンスターの大群と成れば、私達だけでは少しばかり辛いんじゃないかな?」
「かもな、でもあれからもしかしたら数が減っているかもしれないだろ?」
『彼等の様子からすればそれは無いだろう』
ウォードの言葉にラグナは肩を竦める
「太刀打ち出来ない様なら、援軍が到着するのを待つだけだろ」
「その援軍の方が早く到着したようだ」
キロスの言葉に後ろを振り返れば、幾台かの軍用車の姿が見えた 
 

 
 
次へ その頃のスコール