英雄とパンドラ
(パンドラ)


 
ルナティックパンドラ
誰がつけた名前かは知らないが、上手い名前を付けた物だと思った
月の狂気の贈り物
月から呼び寄せられる絶望
全てを破壊するモンスター
確かにコレは、狂気をはらんだ贈り物だ

開いた扉の中には、幾つかのモンスターらしい姿が見えた
そして、目の前で火花を散らす機械
『コレを見ろ』
それから、傷一つ無い1つの機械
「こいつは前もこうだったのか?」
あれだけの銃弾を叩き込んでも壊れなかった機械
倒れ込んだモンスターへ銃口を向けながら、ラグナはウォードへ問いかける
『………ああ、そうだ、あの時は気にも止めなかったが………』
記憶を呼び覚ます様に考えた後、ウォードははっきりと言い切った
「なら、まだ“生きてる”ってことだな」
銃弾を受けた筈のコレは無傷の表面を晒している
なんの装置なのかは知らないし、知りたくもないが………
ラグナは無表情に引き金を引く
微かに動いたモンスターが跳ね飛ばされる
少なくともコレはこの機械の仕業だろう
「どうしますか?」
ライトを手にした兵士の一人が問いかける
「どうするも何も、答えは一つだろ」
こんなろくでもない代物を残して置こうなんて酔狂なヤツはエスタには居ない
完全な破壊
『客人にはお引き取り願おうか』
「だな」
簡潔な言葉の遣り取りに兵士は無言で頷くと、2人ほどの兵と共に戻っていく
『だが、SeeDの方は簡単には引き下がらないぞ』
「まぁ、それがちっと問題だよなぁ」
ラグナの言葉に、ウォードが呆れた様な視線を向けた

「ふむ、よくわかった」
ラグナ君と共にルナティックパンドラへと向かった兵士の内3人が戻ってきた
何でもないような態度を取ってはいたが、彼等には気づかれた可能性がある
いや、十中八九気が付いているだろう
そもそも、起きるはずの無い銃声に気が付いてしまったからな
「既に関係のある者達への指示は済んでいるので、直に到着するだろうと伝えてくれるかな」
モンスターの異常発生の報告を聞いた時から、幾つかの機関には声をかけてある
実際にあの異常と言えるモンスターの群れを確認した時点で、指示さえあればすぐにでもこちらに来れる準備を行うよう指示を出し
異常なモンスターの行動を確認した時点で、エスタ軍への指令は済んだ
最も重要な人物への連絡は、異常に気が付いた時点でラグナが行っているだろう
エスタシティから、この地までの移動は、数時間といったところか
「到着までの間見張りが必要になるだろう、交代の兵士達と共に行くと良い」
ラグナとウォードはそのまま、待機だろうな
不気味な物体と共に過ごす事になるとはご苦労な事だ
指示を受け、兵士達が足早に退出していく
「ああ、それと………」
背後に控えた“副官”へとキロスが各機関へと伝える指示を出す
「それでは、今後この区域は完全閉鎖という事ですね」
確認の言葉を肯定して、キロスは“客人”の元へと向かう
厄介なタイミングで現れたものだな
“今日”という日で無ければ、見学は滞りなく終わっただろう
「運の無いことだ」
彼も、私もな
ため息と共に、キロスは彼等が待つ部屋の扉をノックした
 

 
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