英雄とパンドラ
(結論)


 
「情報の収集と解析を忘れるな」
出した結論は破壊
破壊した瞬間に作動するものが何かは知らないが、残っているかどうかも解らないものを気にした所で仕方が無い
だが、作動したのかどうかさえ解らずにいるってのは気持ちが悪い
保険として“エスタ”と“彼女”へと命令を下す
どこかで何かが動き出す気配でも感じたらそれは一つの印になる
『念のため直接情報も取得します』
そう言ってフィーニャはなんらかの機械を設置していた
ルナティクパンドラへと行き来する兵士の姿にさすがの学者も気が付いたらしい
大騒ぎを始めるかと思ったが、何か理解した事でもあるのか随分おとなしい
その代わりとばかり複雑な顔をしているのはゼルだ
ゼルもセントラの伝承なんかには興味があったみたいだからなぁ
慌ただしく兵士達が突入していく
単なるモンスター討伐のポーズだ
破壊の為の仕掛けは、勝手に進んでいる
「準備完了しました」
ラグナの側へと近づいた兵士が、そっと告げる
この場合の完了は、破壊の準備ではなく、データ収集の準備、だ
「それじゃやるかっ」
わざと辺りに聞こえる様に告げ
剣を手にルナティックパンドラへと向かう
「………俺も行く」
予想した声が追ってくる
「………まぁ、いいか」
ラグナの言葉にスコールは複雑な顔をして、息を吐き出した
「ってスコールっ」
慌てたようなゼルの声に、思い至る
「んじゃ、適当に5人くらい護衛、な」
側に居た兵士へと告げると、すぐに指示が飛び交う
「それじゃ行くぜ」
とりあえずの行き先はルナティックパンドラ
モンスター討伐という嘘の裏側をスコールに見せようと思ったのは………
………ただの気まぐれ

「………それで?」
ルナティックパンドラの中へと足を踏み入れて数歩、スコールが足を止める
「ああ、生きていたシステムを破壊する」
ルナティックパンドラの中にモンスターがいない事位は既に気が付いていたんだろう、ラグナの言葉にスコールは素直に頷く
「手段はあるのか?」
「ああ、幸い壊せない素材じゃないみたいだからな」
ちっと特殊な機材は必要になるけどよ
「その情報は誰が………」
スコールの言葉が不自然に止まる
振り返った視線の先、出迎えに来たんだろうフィーニャの姿が見える
「悪い、待たせたか?」
スコールの事だ“彼女”の姿を見て解ったんだろう
「いいえ、仕掛けが済みましたので戻っただけです」
そっけない言葉にラグナは苦笑する
「破壊の方の準備はどうなってる?」
「そちらも含めて準備は完了しました、小規模な爆発が起きる可能性が在りますので、全員この付近から退避する必要があります」
ルナティックパンドラへと入っていった兵士達は、裏側にある正規の入り口(らしい場所)からそのまま外へ抜け、適当な距離を置いて待機している
「残ってるヤツはいるのか?」
手にしていた剣をラグナは収める
「あなた方以外は誰もいません」
確かに人の気配は感じられない
「小規模な爆発と言ったが、規模はどの程度になる?」
「問題の部屋及びその周囲の機関部は爆発に巻き込まれるものと思います」
スコールの質問に的確な答えを返しているが、残念ながらスコールはその場所を知らないんだよな
「この辺りは安全って訳だ」
「………爆発には巻き込まれません」
微妙な言い回し
「それなら、何に巻き込まれる?」
ラグナの問いかけに、フィーニャは一瞬スコールへと視線を向ける
眉を寄せ、それでも背を向けて立ち去ろうとするスコールの腕をつかむ
「ラグナ………?」
「一蓮托生………だったか?どうせここまで来たんだ、巻き込まれろ」
本心は俺自身にも解らない
ただ、まぁそろそろもういいかなっていうそれだけだ
フィーニャがスコールじっと見つめている
様子を窺うラグナへと視線を合わせ、ゆっくりと頷く
「破壊の為準備していた所、装置から微かな反応が在りました」
「破壊の際に流れるってやつか?」
「それと同じものかは解りませんが、向けられた先はこの建造物の中です」
ラグナの手がスコールの腕を放す
「場所は?」
問いかけたスコールへフィーニャは一つの場所を告げた
 

 
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