(後始末)
戦闘の音が続いている この身体がせめて戦闘用の身体であったなら……… 戦いに参加する事が出来ない私は、離れた場所、安全な場所で待つことしか出来ない この身体はあくまでもデータを収集し分析する為の物 荒事にも対処する事の出来た以前の身体は壊れてしまった 信用していない訳ではない 負ける事は決して無い けれど、人には万が一、もしもという言葉が存在する もしも、万が一……… 蓄積されたデータがはじき出した回答ではあり得る筈のない事 この規模、この程度の装置 搭載されているシステムは深刻な物ではない筈 データはそう告げているけれど このデータが正確なものであるという保証はどこにも無い この身体が戦闘用のものならば この身体の他にもう一つ私に身体があったならば……… 私には戦いの様子に意識を傾けながら、ただ待つ事しか出来ない 戦闘の音が続く 私と同じ機械のたてる音が響く リズミカルに続く金属音 そして……… ぴたりと止まった物音に、私は身を乗り出す 機械がたてる音は続いているけれど、生態反応は変わらずにある じっと見つめる壁の向こう側の様子が僅かに透けて見える 「………大丈夫」 私の中から言葉が零れ墜ちる 空気が揺らぎ、空間が歪む どこからともなく現れる一頭の生命体 正面に立つ機械を吹き飛ばし、そして隠し部屋へと突き抜けていく 辺りに響く轟音 そして……… 「………機能停止」 私が聞いていた機械の音が止んだ 目を向けた先は、厚い金属に囲まれた壁が見える ………さっきのはいったい? あるはずの壁を透過して見えた光景 この“身体”には私が知らない機能がある事だけは解った 「これは、ひどいですね」
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