英雄と伝言
(招待 SideL)


 
ガルバディアの端
ほんの数日前に訪れた場所
「なんだかおかしな事になってるな」
ラグナは、手にしていた“鍵”を握る
振り下ろした“鍵”に現れる刀身
前方に見えるモンスターが、ラグナの方を振り返る
身体に掛かる重心が変わる
ラグナの手が“鍵”をにぎり直す
モンスターが、まっすぐに向かってくる
振り下ろした“鍵”があっさりとモンスターを切り裂く
倒れたモンスターを回避して、洞窟へと足を進める
前方に再びモンスターが顔を覗かせる
「前に来たときはこんなんじゃなかったよな?」
それとも、前はスコールが片づけた後だったか?
この前聞こえていたはずの鳥の声が聞こえない
あの後、何かがあったって事か
モンスター以外の生き物の気配がしない
ラグナは武器となった“鍵”を手に、慎重に足を進める
「こりゃ、異常事態だな」
普通ならばあり得るはずの無いモンスターの数
「あそこに、モンスター集束装置があるなんて話は聞いてないんだがな」
この地域には生息しないはずのモンスターの姿が見える
この現象は明らかに自然発生ではない
動き出した機械の種類がモンスターをおびき寄せる類のものなのか
それとも、動き出した機械にモンスターが寄っていったのか
「たどり着く為には、モンスターを倒さないとならないってことか」
モンスターの集団
とは言ってもそれほど大規模なものではない
“魔法”が使えるならば、簡単に一掃することも出来たはずだ
けど、使えないものは仕方が無いよな
せめて、一掃できる様な武器を持ってくれば良かったのか
近づくモンスター達を切り伏せながら、つらつらとそんな事を考える
「きりがないな」
扉がある洞窟の入り口が見える
知性が残っているのか、一部のモンスター達がラグナから距離を置く
「モンスターのたまり場になんかなってないだろうなぁ?」
作動した機械が原因でモンスターが集まってるというのならば、ぎっしりとモンスターが詰まっているなんて事も考えられる
呼吸を整えて“鍵”を構える
入り口に溜まっていたモンスターの一部が揺らぐ
「悪いが、そこに用事があるんだ」
力を込めるのと同時に、刀身の形状が変わる
一所に溜まった者達を一層するに丁度良さそうな形―――大鎌
自然と笑みが浮かぶ
持ち替えると同時に腕を振る
一瞬で倒れたモンスター達を乗り越え、洞窟の中へと足を踏み入れる

微かな刺激を感じる
耳の奥に鳴り響いた高音
そして静寂
「モンスター対策はできてるって事か」
洞窟内にモンスターの姿は無い
扉に刻まれた意匠がぼんやりと光を放っている
これ見よがしに浮かんだ紋様
刃が消えた“鍵”を鍵穴へと差し込む
扉に浮かび上がった光がせかすように点滅を繰り返す
もう1本の“鍵”
微かな音を立てて鍵がはまる
音も立てずに扉が開いた
 
 
 
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