英雄と伝言
(障害 SideS)


 
依頼の内容は遺跡の探索の護衛
SeeDの仕事としては、さほど変わったものでは無く
エスタからの依頼だとすれは、今までも在った事
「古い時代の遺跡はそうと気付かないだけで、案外身近に残っているものです」
責任者だというフィーニャが淡々と言葉を紡ぐ
「今までは、手を回す余裕もその必要も無かったことからそのまま放っておいたのですが、そろそろ本格的な調査をすべき―――今が調査をするチャンスだと判断されました」
感情の伺え無い声が、回りくどい前置きを告げる
目の前に置かれた地図はセントラ大陸のもの
「今回確認をしたいのはこの場所です」
指し示されたのは、セントラの中央、大陸を分断した海岸に近い場所
「本当でしたら、この中を―――」
フィーニャの指が、海を指し示す
「探索したいと思うのですが、海中を探索する為には特殊な機械などが必要となります」
「セントラの事を調べるって事なのか?」
「現在海となったこの場所は、嘗てセントラの“王都”があった場所です、もし何かが残っているのならば、色々な事が判明するとは思いますが」
今はそこに行く手段が無いから、近くにあるこの場所を調べる事で我慢するっていうのか?
「………王都?」
キスティスの言葉に、フィーニャが首を傾げる
「セントラの王都って言ったかしら?」
「はい、それがどうしました?」
エスタでは常識なのか、それとも“彼女”は知らなかったのか?
「セントラが王制だったなんて初めて聞いたぜ」
驚きを浮かべたゼルがスコールへと同意を求める
「………そうだな」
確かにセントラが王制だという話は聞いた事が無い
それ以前に、セントラがどんな国だったのか、聞いた事が無い
「………そうですか、ではそうだったと覚えておいて下さい」
顔色一つ変える事無く告げられる言葉
当然だ、顔色が変わるはずがない
「ああ、覚えておくけど」
「それでは話を続けます、今回の目的となるこの場所ですが………」
キスティスが僅かに肩を竦める
彼女が示すこの場所には、何もなかったはずだ
スコールがそう考えるのと同時にキスティスが指摘をする
「存在することが解らない様隠されている事など、珍しくもない事だと思いますが?」
平然と告げられる言葉
彼女には嘘を言う理由も必要も無い、はずだ
ならば、ここに遺跡がある事は真実なんだろう
それ以前に、彼女は人ではない存在
セントラの遺産そのものである彼女
彼女なら俺達が知らない情報を幾らでも抱えているだろう
「………そうね、そこに在ることが確認されているというのなら問題はないわ」
何処か釈然としない様子でキスティスが答える
「まぁ、本格的に探した訳じゃないしな」
確かに俺達はそうだ
だが、他の奴等―――ガルバディア―――があの辺りを探さなかったハズがない
見つからなかったという可能性も否定は出来ないな
未だ追いつかないセントラの技術の数々
「それで依頼内容は」
「あの場所に集うモンスターを排除する事、私が調査している間、私の護衛をする事」
―――私?
キスティスとゼルが承諾の意を告げる
「では、移動しましょう」
問いかけようとしたスコールの言葉は無視される形になった
 
 
 
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