アトピー性皮膚炎 (atopic dermatitis) とは?
 アトピー性皮膚炎とは、皮膚に慢性的なかゆみが生じる病気です。「アトピー」というのはギリシャ語の"ατοπια"(英語では"atopia")に由来し、「奇妙な」という意味です。これは1923年にCocaとCookeによって名付けられました。この名の由来のとおり、いまだにその原因は「奇妙な」要素が多く、これといった断定的な特定はされていません。卵や牛乳などを飲食して出てくる場合もあります。ダニやほこりが原因でかゆみが生じる人もいます。また、ストレスなどの精神的な要素もあるといわれています。一種のアレルギー反応によるものだと考えられていますが、はっきりしたことはわかっていません。

 日本皮膚科学会によれば「増悪・寛解(かんかい、病気の症状が軽減またはほぼ消失した状態のこと)を繰り返す、掻痒(そうよう)のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」と定義されています。そして、アトピー素因とは、「1. 家族歴・既往歴に気管支喘息(ぜんそく)、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちのいずれか、あるいは複数の疾患がある、または 2. IgE抗体を産生しやすい素因」とされています。ここで、IgE抗体というのは何かを説明する前に、まずアレルギーについて説明します。

 アレルギーというのは、病気から体を守る機能が強くはたらきすぎて、体に害を及ぼしてしまう反応をいいます。本来、人間の体にはウイルスや細菌などの異物が入ってくると、その異物に対する対抗物をつくって異物を体から追い出す機能があります。

 たとえば、初めてはしかにかかったとします。一度はしかにかかると二度目ははしかにかからないか、かかっても軽くすみます。これははしかを起こすウイルスが体の中に入って増殖すると、それに対する対抗物をつくって体から追い出そうとする機能がはたらくからです。

 この機能を「免疫」といいます。また、ウイルスや細菌などの異物を「抗原」、体がつくり出す対抗物を「抗体」といいます。

 一度侵入してきた抗原は体が覚えています。そのため、再び同じ抗原が侵入しても即座に大量に抗体をつくって、抗原を排除することができるのです。このように、免疫というのは自分の体を守る大切な機能なのです。

 しかし、この免疫が常にいい方向へはたらくとは限りません。人によっては悪い方向へはたらいてしまうこともあります。これが「アレルギー」なのです。

 アレルギー反応には、I型、II型、III型、IV型があります。このうち、アトピー性皮膚炎に関係しているといわれるものがI型アレルギーです。そして、I型アレルギー反応はIgEという抗体の一種によって引き起こされるのです。つまり、IgE抗体は、本来病気から体を守るはずの抗体でも悪いはたらきをしてしまうのです。そのため、アレルギー疾患の人はIgE抗体を作りやすくなっている、もしくはIgE抗体の量が多いのが特徴です。

 ではアトピー性皮膚炎の人はこのIgE抗体が作りやすくなっている、もしくは量が多いのかというと、そうではないのです。アレルギー疾患のうち、遺伝的要素の強い病気を「アトピー疾患」と呼んでいます。アレルギー性喘息、花粉症、じんましんなどの症状が現れる人はアトピー疾患です。そして、アトピー性皮膚炎にもかかりやすい人たちです。しかし、アトピー疾患でない人たちもアトピー性皮膚炎になるということもあるのです。アトピー性皮膚炎の患者の2、3割はアトピー疾患ではないのです。つまり、IgE抗体が多いわけではないのにアトピー性皮膚炎にかかってしまう人たちもいるのです。このように原因が特定できないため、アトピー性皮膚炎の治療は難しいといわれているのです。

 アトピー性皮膚炎に効く薬としてはステロイド剤が挙げられます。この薬はアトピー性皮膚炎に良く効く薬として、皆さんも聞いたことがあるかもしれません。

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