温泉名 | なかだけおんせん 中岳温泉 |
施設名 | なかだけおんせんろてんぶろ 中岳温泉露天風呂 |
所在地 | ほっかいどうかみかわぐんひがしかわちょうゆこまんべつ 北海道上川郡東川町勇駒別 |
場所概略 | 富良野市街地より国道237号線を北上する。天人峡 旭岳温泉方面の看板が出たら東へ向かう。旭岳方面へ向かい、大雪山旭岳ロープウェイ駐車場で車を停める。そこからロープウェイに乗り、終点の姿見駅で降りる。姿見駅からは徒歩で行く。姿見の池を左に曲がり、愛山渓・中岳登山道へ入る。旭岳の山腹を歩き、石が積まれてできた登山標識を中岳方面に右折する。そこから木の板で作られた道を歩くと、硫黄の川がある。その中腹あたりにある。姿見駅から徒歩約2時間。 |
駐車場 | 旭岳ロープウェイ公営駐車場あり。100台くらい停められる。1日\500 |
営業時間 | 24時間 年中無休 |
料金 | \0 |
風呂数 | 混浴露天風呂1 |
脱衣所 | なし |
泉質 | 硫黄泉 |
湯色 | 白濁色 |
問合せ先 | 0166-82-2111(東川町観光協会) |
入湯日 | 2002/9/2 |
感想 | 徒歩約2時間かかる露天風呂。それだけに着いたら充実感があった。最高! 景色もいいし、風呂もちょうどいい湯だった。帰りは軽い脱水症状を起こしてしまった。ペットボトルが必要。 |
評価 | 5 |
中岳温泉は、私が「一人旅 −北海道へ−」編で4番目に行った温泉です。そして、4番目に入った温泉です。
中岳温泉は大雪山の中岳にあります。
中岳温泉に行くには、富良野市街地から旭市へ向けて国道237号線を北上します。JR富良野線の北美瑛駅近くになると、「天人峡 旭岳温泉方面」という看板が出てくるので、その交差点を右折し、東に行きます。
あとは看板どおりに旭岳方面に進んでください。途中で旭岳方面と天人峡方面の分岐点が出てきます。その分岐点を旭岳方面に進むとカーブが多くなります。分岐点から少し行ったところに大きな右のカーブが待ち受けています。このカーブは見晴峠と呼ばれています。旭岳を見晴らすことができるからこう呼ばれています。そのカーブを過ぎて、約13km行くと、大雪山旭岳ロープウェイの旭岳山麓駅に到着します。国道237号線から約34.5kmの道のりになります。
大雪山旭岳ロープウェイには駐車場があります。結構広い駐車場です。約100台の車を駐車することができます。もちろん、大型車も駐車することができます。この駐車場の駐車料金は、乗用車で1日500円です。1日で500円という料金は都心と違って安いなあと思いました。
駐車場に車を停めて、私は準備に取り掛かりました。中岳温泉はロープウェイの駅から2時間くらい歩いていかなければ行けない温泉だということを知っていたので、私は靴を登山靴に履き替え、高所に行くので念のためリュックに長袖を入れてロープウェイへと向かいました。ロープウェイで上ってそこに温泉がある・・・。何だか、みくりが池温泉を思い出してしまいました。装備もみくりが池温泉と同じような装備をしました。ただ違うところがあるとすれば、みくりが池はロープウェイの駅から徒歩15分くらいで行けるのですが、中岳温泉は2時間も歩くことです。登山道を2時間歩くということでは本沢温泉もそうでした。そう考えると、今回の中岳温泉はみくりが池温泉と本沢温泉のようにロープウェイと登山を楽しむことができるということですね。何だかそういうことを思い出しただけでわくわくしてきました。
旭岳山麓駅で、私は乗車券を買いました(左写真)。みくりが池温泉に行くのと同じように往復乗車券を買いました。旭岳山麓駅から姿見駅の往復乗車券は2,800円でした。中岳温泉自体は無料なのですが、駐車場代やロープウェイ代を考えると、中岳温泉へ行って帰ってくるには3,300円かかるということになります。でも、それだけかかっても行く価値があると、私は思いました。
ロープウェイ出発まで時間があったので、私は駅構内を散策しました。駅内には旭岳周辺の散策コースが書いてある地図がありました。それによると、ロープウェイの終点は姿見駅という名前で、そこからいろいろな散策コースがありました。しかし、中岳温泉に行くコースはありませんでした。2時間も歩くから、遠くて省略されているのかな、と思いました。
ロープウェイの発着所にはお土産やがありました。私はそこであるものを買いました。今回の徒歩では必要だと思ったからです。それは熊よけの鈴でした。北海道では熊が出る!ということをいろいろと聞いていたからです。そのことは旭岳山麓駅でも警告していました。熊に遭遇したらひたすら逃げろ!という感じだったので、私は熊に遭遇しないように気をつけなければ、と思いました。でもいくら人間が気をつけても熊はやって来てしまうんですよね。であれば、やってこないような努力をしなければいけないと思い、熊よけの鈴を買いました。熊は人の気配がするところには近づかないと言われているので、音を出すことによってその存在を示せば近づいてこないそうです。そういう意味では身に付けているだけで音を出す鈴などは、熊よけに有効だそうです。皆さんも北海道に行ったときには熊よけの鈴を装備することをお薦めします。
こんなふうに熊が出てしまう意味でも、北海道はすごい場所だと思いました。
熊よけの鈴を腰につけて、私はロープウェイが来るのを待ちました。みくりが池温泉に行ったときと同じように、温泉に入れる!という喜びがだんだん湧き上がってくる気持ちがわかりました。
そして、ロープウェイが来ました! とても待ち遠しい時間でした。私は急いでロープウェイに乗り込みました。こんなところで急いでもしょうがないのに・・・。
ロープウェイではアナウンスでいろいろと説明をしていたのですが、全く耳に入っていませんでした。私の心の中から「温泉、温泉、温泉に入れる!」という声が耳に入っているだけだったのを覚えています。
旭岳は大雪山にある山です。大雪山とは、北海道のほぼ中央に位置し50kmにわたって連なる2,000m級の山々の総称です。その大雪山の最高峰が2,290mの旭岳なのです。旭岳は大雪山の最高峰だけでなく、北海道の最高峰でもあります。その最高峰にどんどんロープウェイは近づいているのです。しかし、私は旭岳よりも温泉! そんな強い温泉への思いがのちに痛い目を見ることになるとは誰が予想したでしょうか。
ロープウェイが終点の姿見駅に到着しました。姿見駅は下にある旭岳山麓駅と同じで晴天でした。夏にしてはちょっと肌寒いかなと感じました。高度が上がったからだと思います。しかし、絶好の登山日和(びより)です。旭岳に登る日に晴天にしてくれるなんて、北海道は私を見捨てませんでした。ありがとう!北海道!!(^o^)
姿見駅にもホワイトボードに散策コースが書いてありました。こちらは手書きで書いてありました。姿見の池や夫婦(めおと)池などに行くコースが書いてありました。これを見ると姿見の池や夫婦池は近くて簡単に行けそうな感じだったので、私は姿見の池と夫婦池を見てから中岳温泉に向かおうと思いました。
姿見駅でもお土産やがありました。また、自動販売機でジュースも売っていました。私は2時間も歩くから、500mlのペットボトルのジュースを買っておいたほうがいいかなと思い、買いました。しかし、このジュースがあとになってどれほどありがたみのあるものになったか、このときの私は知るよしもなかったのです。
姿見駅を出ると、そこから旭岳が一望できました。遠くから見てもその存在を充分に誇示することができる姿でした。思わず記念に撮影をしました。
姿見駅からの旭岳
私はまず、姿見の池に行くことにしました。姿見駅付近のコースは周遊コースになっていて、1周1時間で周ることができます。私は姿見駅から左右に分かれる道を右に行きました。そして、すぐの分岐点を左に行きました。左回りで姿見の池へ行きました。左回りで行くと、姿見の池には約20分で行くことができます。
姿見の池は、旭岳が噴火したときの火口のくぼ地に水が溜まってできた池です。旭岳の美しい姿を写すことからその名が付いたそうです。確かに、姿身の池はきれいでした。そして、その名にそぐわずに旭岳の姿を映し出していました。
また、姿見の池付近ではあちこちの噴気孔から噴煙が上がっていました。自然の息吹を感じました。
姿見の池をあとにして、今度は夫婦池に向かいました。夫婦池は姿見の池から左回りで約15分かかります。姿見駅から右回りで行くと、約10分で行くことができます。
夫婦池というのは、大小2つの池があり、それらを総称して夫婦池と呼ばれています。大きいほうが鏡池、そして小さいほうが摺鉢(すりばち)池と呼ばれています。どちらも姿見の池と同じで、旭岳が噴火したときのくぼ地に水が溜まってできた池です。
鏡池 摺鉢池
一通り旭岳周辺の観光箇所を見た私は、いよいよだという気持ちで中岳温泉へのコースに向かいました。中岳温泉に行くコースは周遊コースから外れたコースになります。そのコースは夫婦池に近い場所に周遊コースと分岐しています。その分岐点には「愛山渓・中岳登山道のご案内」という看板があります。その看板に中岳コースと書いてあり、そこには「中岳近くには露天風呂もあります。」と書いてありました。この中岳コースです! 私が希求していたのは!! 私はその地図に書いてある中岳コースをしっかりと目に焼き付けて、中岳コースへと向かいました。
また新たな温泉に入るための登山が始まったのです!
中岳コースは旭岳の中腹を歩くようなコースでした。起伏はあまりありませんでした。上り坂もそんなになく、どちらかというと平坦な道のりでした。ただ、周遊コースと違って道はそんなに整備されていませんでした。道幅も狭く、すれ違うには譲り合わないと通れない道幅でした。途中には平野が広がっていたりして、自然の景色を堪能することができました。旭岳を右に見ながら、私は快調に道を歩いていました。熊よけの鈴の音を鳴らしながら・・・。
約1時間歩くと、裾合(すそあい)分岐と呼ばれている場所に到着しました。そこには石碑がありました。その石碑は登山標識で、1974年9月に東川町大雪山国立公園保護協会が設置したものでした。その石碑にはこのようなことが書いてありました。
昭和45年(1970年)11月28日、金沢市に住む電通職員の方が下山途中に天候の急変によって遭難してしまいました。関係者たちの捜索もむなしく、翌年6月24日まで発見することができませんでした。山岳を愛する登山者の安全を祈念し、また遺族の希望もあり、ここに登山標識を設置したそうです。
私はその石碑にしばらく黙とうしました。犠牲になった人たちがいたから人類は繁栄してきたのです。その犠牲を忘れてはいけない、と思いました。
裾合分岐 裾合分岐の登山標識
気を取り直して登山を再開しました。裾合分岐からは道が木の板になっていました。そして、その道の周りには平野が続いていました。遠くまで見渡すことができる平野が広がっていました。この平野は裾合平(すそあいだいら)と呼ばれています。夏にはチングルマの花が咲き誇り、白いじゅうたんのようになるそうです。私が来たときは夏から秋にかける時季だったので、チングルマの花はもう散ってしまい、薄桃色の花穂が平野一面に咲き乱れていました。
裾合平
ちなみに、チングルマとはバラ科ダイコンソウ属の花です。15pほどの高さの小低木で、中心が黄色、周りは白い花を咲かせます。北海道と本州中部地方以北の高山帯の雪田周辺などに生育しています。花が散ったあと花柱が伸びて、花穂が薄桃色になります。チングルマという名前の由来は、花の実が玩具の稚児車(ちごぐるま)に似ていて、それが転化してチングルマになったそうです。稚児車というのは、子供のおもちゃの風車のことを言います。チングルマの花言葉は「可憐」です。この花言葉にそぐわない、可憐な花たちでした。
話が脱線してしまったので、もとに戻しましょう。木の板の道は平野を突き抜けるように続いていました。中岳に向かっているだけあって、上り勾配になってきました。しかし、それでもなだらかな上り勾配でしたので、そんな苦にはならなかったです。
裾合分岐から約40分歩くと、木の板でできた道もなくなり、山に近づいてきたことを証明するかのようにごつごつした岩が出てきました。そして、地形が谷のようになって、川が出てきました。その川がほんのりと硫黄のにおいを放っていました。私は直感しました。温泉はもうすぐだっ! それからはもう無我夢中でした。必死で中岳温泉露天風呂を探しました。私が持っていたガイドブックには「大雪の温(ぬくも)り」という看板がある写真が載っていたのでそれを目印に探していたのですが、どこにもありませんでした。あたりをうろちょろ探しました。
大きな岩を乗り越えて、川のあたりを必死で探しました。すると、あれっ、これが浴槽・・・、と思えるような場所がありました。岩だらけの場所にくぼみがあり、そこに水が満たされていたのです。そして、その水を触ってみると、温かい。(^o^) 思わず、顔が緩んでしまいました。中岳温泉の発見です! 2時間も歩いてようやく発見したのです。その喜びは言葉で表すことはできないくらいでした。
この写真あたりです。
中岳温泉露天風呂は脱衣所もなく、周りに隠れる場所もないところにありました。もちろん混浴です。私が来たときには「大雪の温り」という看板はなかったのですが、その代わり、スコップがありました。浴槽が浅ければ、これで掘って調整してくれということなのでしょうか。
周りには誰もいませんでした。私は今がチャンスだと思い、服を脱ぎ捨てて入りました。服は近くの岩に脱ぎ捨てました。はあ〜、2時間歩いたあとの入浴は極楽です。今までの疲れが本当に飛びました。さらに、その気持ちを高ぶらせるかのような晴天の天気と周りの自然の景色・・・。すばらしい! 幸せな気分で入浴していました。
浴槽はちょっと浅めでした。腰を沈めても胸まで浸かることができないくらいでした。下には砂利が埋まっていたみたいで、それがお尻に適度な刺激を与えてくれました。しかし、何よりもよかったのがお湯でした。ちょうどいい温度で、源泉のお湯がそのまま流れ出てくるのがすばらしいと思いました。硫黄泉のためちょっと硫黄の匂いがして、温泉に入っているという気持ちを高ぶらせてくれました。
途中で、登山している方が私の入浴中に通り過ぎました。そして、「気持ちいいですか。」とたずねてきました。私は迷わず、「はい、最高です!」と答えました。
しばらく入っていると、今度は4人組の女の子たちがやってきました。4人とも20代前半と思われる若い女性たちでした。私は、変な男が裸で露天風呂に入っているから近づかないだろうと思っていたのですが、どんどんこちらに向かってくるではありませんか! そして、私を取り囲むかのように浴槽まで近づいてきたのです。
「ゲッ、マジかよ!?」
と思いました。女の子たちは明らかに裸で入浴している私の存在を知っているはずです。見えないはずがありません。それなのに、なぜ? もしかして、彼女たちも入ってくるの? 混浴できるの? なんて、思ってしまいました。すると、何と女の子たちは私が入っているのにもかかわらず、浴槽に足を入れてきたのです! ちょっとびっくりしました。私の存在を見て見ないふりをしながら、女の子同士で「暖かいね〜。」なんて言いながら、足だけを浴槽に付けていました。私は声をかけようかどうか迷いましたが、変態だと思われてしまいそうなので、どうしていいかわからずに、ただじっと黙って入浴していました。
そこから無言のかけ引きが始まったのです。さて、いつ出よう・・・。私はこの難題に対して真剣に悩みました。女の子たちは私がさっさと出て行ってほしいために足を入れているのでしょうか、そして、女の子たちだけで入浴するつもりなのか、それともただ自分たちが足湯を楽しみたいだけなのでしょうか。私は考えました。いろいろ考えていたため、時間が結構経ってしまいました。しかし、女の子たちは全く私のことを気にせず、会話をしていました。う〜ん、これはさっさと退散したほうがいいのかなあ、という結論が私なりの回答でした。
そそくさと浴槽から上がり、岩に置いてあった服を着て、何食わぬ顔で浴槽から離れました。 女の子たちには私の裸を見られてしまいました。(*_*) それとも見たくもないものを見せるなという感じだったのでしょうか。両者には相変わらず会話がありませんでした。服を着終わったので、私は中岳温泉をあとにしました。自然の中にあるという感じで、最高に楽しめた温泉でした。
今ごろこのホームページを見て、「あの人だっ!」なんて女の子たちが気付いてくれているかもしれませんね。
帰りは行きと同じ道をたどりました。順調にみえていた道も、だんだんと恐怖が迫っていたことを私は知りませんでした。
歩いて1時間くらい経ったでしょうか、だんだんと水がほしくなってしまいました。私は本能的にジュースを飲みたいと思いました。行きに買ったペットボトルのジュースは、行きの道で少しずつ飲んでいたので半分くらいに減っていました。たくさんの水を飲み干したいと思ったのですが、ここで理性がはたらいたのです。これをすべて飲み干したら、あと1時間の道のりは飲み物なしで歩いていかなければならない・・・。しかし、異常にのどが渇いている・・・。どうなっているんだろう。なんて考えながら、ちょっとだけジュースを飲んで、再び歩き出しました。
しかし、だんだんとのどの渇きが増え続けてきたのです。これはもしかして脱水症状! そう気付いたときにはちょっとした脱水症状を起こしていたみたいでした。異常なまでののどの渇きに、何度ペットボトルのジュースを全て飲み干したいと思ったことでしょう。登山とはいえ夏の晴天の日に歩いているのに、汗が出てこなくなりました。息ははあはあと荒くなっていました。やばい、このままでは、倒れてしまう! と思いました。しかし、あと少しがんばれば姿見駅に到着してジュースが買えるのです。そうやって自分自身を励まして、歩き続けました。
そして、とうとう夫婦池が見えてきました。周遊コースに到着です! このときは本当に安堵しました。
息は乱れながらも倒れずに、ようやく姿見駅に着くことができました。そして、真っ先にジュースを買いました。このときはここでジュースを買っておいてよかった、と思いました。自動販売機に感謝しました。皆さんも中岳温泉露天風呂に行くときには、ジュースを買っていくことをお薦めします。
帰りのロープウェイでは、ジュースを一気に飲み干して、しばらくは安静にしておりました。
ようやく旭岳山麓駅にロープウェイが到着しました。駅を出て、私は中岳露天風呂に入ることができてよかった、と改めて実感しました。
女の子たちに裸を見られたり、脱水症状を起こしたりといろいろありましたが、開放的で自然の風景が楽しめる露天風呂に入ることができてよかったです。
このような無料の温泉施設がいつまでもあって欲しい、と思いました。