(待機 SideL)
偵察に行ったゼルが戻ってくる 「停泊してたぜ」 「なら、行くか」 簡単に言いラグナは立ち上った 「じゃあ、頼んだぞ」 スコールとサイファーの2人にラグナは簡単に声をかけると、作戦に従って歩き出す 一歩ずつ歩く毎にその雰囲気が変わっていく 同じように歩き出した彼等の気配が遠ざかる 「それで、どうするつりだ?」 遠くの方で、海賊達が使っているらしい明かりが見える 「どうするって、何が、だ?」 明かりの位置が信頼出来るものならば、キロス達が向かう方向には海賊達はほぼいない事になる 「いや、ラグナ君は、この場所で何をするつもりなのかと思ってね」 セントラの遺跡 遺跡というよりは、滅び去った街の廃虚といったところだ 規模としてはなかなか大きいかもしれない 「何をするもなにも、海賊退治、だろ?」 「その通りだ」 賑やかな海賊の声が聞こえる 予想外に海賊行為がうまく行って喜んでいるのだろう 「彼等には悪いが、まとめて罪を被ってもらう」 太陽が傾き始めている 音を潜めて歩く中で、さりげなくラグナが口にする 「確かに、その方が無難だろう」 きっと、科学者や歴史学者の非難が集中する 卑怯な手段だが、言っても解らない相手を納得させるのは至難の業だ 押し付ける先があるのなら、この際まとめて押し付けてしまったほうが後が楽になる 「スコール君は嫌がりそうだな」 理屈では解っても、実行するのに嫌悪を覚える 「ちょっと潔癖な所があるからな」 ラグナが困ったような顔する ラグナが、私達が行おうとしている事の意義には彼は問題なく賛成するだろう、だが、その後の行動は納得することが出来ない 良くも悪くも若い、という事だ 「スコールが聞いたら怒るぜ」 「だからこそ、若いというのではないかな?」 キロス達は、笑いながら足を止める 「それでラグナ君の見立てでは、どうなのかな?」 キロスの耳に遠くで騒ぎの起きる音が聞こえる 「年月を考えると問題ないと思うんだけどな……」 風化し、崩れ落ちた廃虚が広がっている 「だが、潜水艇は稼動している」 笑顔の消えた真剣な眼差しが辺りを探る 「それが問題だよな」 海賊達の抵抗だろう、銃声が風に乗って聞こえてくる ラグナが先に廃虚へと足を踏み入れる 「ま、なんとかなるだろ」 口調だけはいつもと変わらない 「手に負えないようなら引き返してきたまえ」 キロスもまた、廃虚へと足を踏み入れ、音のする方へと歩き出す 「出来るならそうするけどな……」 ラグナは廃虚の中心部へ向けて歩き出す 「遅いようだったら増援でもよこしてくれ」 散歩にでも向かうような軽い足取りで、手を振りながらラグナが歩きさる 「了解した、迷子にならないように気をつけたまえ」 幾分急ぎながらキロスはスコール達の方へと歩く 「迷子?……もうなってるみたいだぜ」 予定通りの単独行動 「……なるほど、確かにその通りのようだ」 だが、ラグナがいない事を説明するとなると、はぐれたというしかない 音が近づくにつれキロスは走り出す 崩れた建物の間から、人影が飛び出す 慌てて銃を構えるよりも早く、カタールの一閃が放たれる 「無駄な抵抗はよしたまえ」 右手から、銃がすべり落ちる 「まだ死にたくはないだろう?」 喉元に刃を突きつけられ、相手は抵抗をあきらめた こちらは案外早く片が付きそうだ 捕らえた海賊を引きずるようにして、キロスは合流先へと向かった |