英雄と遺産
(待機 SideS)


 
向かう先に潜水艇が停泊している事が確認された
「じゃあ、頼んだぞ」
ラグナのあっさりした言葉で作戦は始まった
それ以上の説明もなく、2人は遠ざかっていく
「……私達も行きましょうか?」
キスティスは、残った3人声を掛けた
「おお!」
キスティスの言葉に返事を返したのはゼルのみ、スコールは何の反応も見せないし、サイファーは、先行して移動を始めている
キスティスは内心大きなため息をつく
こんなので大丈夫なのかしら?
息を潜めての移動
海賊達の灯す明かりが大きく見える頃にキスティス達は足を止める
「たいした人数じゃねーな」
サイファーは立ち上がり、明かりの方を伺っている
ちょっと……
「海賊なら多い位だ」
同じように伺っているスコールの言葉
……2人とも……
「なあ、ちょっとやばいんじゃないか?」
その脇に、ゼル
あなたも、よ
「あなたたち、見つかったらどうするつもりなのっ!」
怒鳴りつける訳にもいかず、キスティスは精いっぱい声を押さえる
「大丈夫だ」
落ち着いたスコールの声が返ってくる
そして、ばかにしたようなサイファーの眼差し
その根拠はどこからくるのよ?
「あのさ、夕暮れ時だし、向こうからは見えないと思うぜ」
ゼルの困ったような言葉にキスティスは我に返る
確かにこの乏しくなっている明かりでは見えづらいかもしれない
それでも
「向こうはどんな装備をしているか解らないのよ?」
もう少し慎重になった方が良いわ
「それで何がまずいって?」
キスティスの忠告もサイファーには奇麗に無視される
「え?あ、この位置だとさ、先に潜水艇取られるんじゃないか?」
確かに位置的に私達に気づいた相手が先に中へと乗り込んでしまう
「なら移動すれば良いだけだろうか」
ガンブレードを肩に担いでサイファーが無造作に歩き出す
「ちょっと、サイファー!」
不意にサイファーが足を止め振り返る
「おい、俺が合図を送ってやる」
「解った、良いポジションを見つけろ」
スコールの言葉に満足気に笑い再び歩き出す
「って、俺をおいてくんじゃねぇ!」
「ゼル、ちょっとまって!」
慌てて走り去ろうとするゼルをキスティスはどうにか引き止めた
「?なんだよ?」
いいから、もう少しこっちに来なさい
キスティスと視線を併せてゼルがしゃがみこむ
「ゼル、サイファーは試験を受けてるって事を忘れないで頂戴」
ゼルは首を傾げ、そして目を見開く
「ああ、そういえばそうだっけ」
ちょっと………
「態度が態度だからSeeDじゃないって忘れるんだよな」
納得したように、確認するように何か呟いている
「だから、ね」
強く言う事で、意識をこちらに向けさせる
「良い、あなたがサイファーの行動を……チェックするのよ」
止めなさいと続けるつもりの言葉をキスティスは直前で変える
「ええ、俺が!?」
「他に人がいないんだもの、仕方ないでしょ?」
「それはそうだけどよ……」
「ゼル早く行った方が良い」
尚もキスティスが言い募ろうとした瞬間、スコールが口を挟んだ
スコールの言葉にゼルはサイファーの方を慌てて振返る
「やべっ!じゃあ、行ってくるから!」
キスティスの目にはサイファーの姿が見えない
単独行動は減点だわね
ゼルが急いで走って行く
「キスティス……」
不機嫌そうなスコールの声
「あんたの行動は減点対象だそ」
スコールは廃虚へと静かに近づいて行った
私の行動が?
「……どういう事なの?」
「試験官でも、司令官でもない」
キスティスの呟きに答えが返ってくる
試験官でも………
それは確かにそうだけど……
「じゃあ、どうしろって言うの?相手は素人………」
スコールの冷ややかな視線が突き刺さる
「……結局よけいな口出しで行動を妨害したのは事実だ」
言葉に詰まったキスティスを置いて、スコールは、先へと進む
呆然と背中を見送っていたキスティスは、慌ててスコールの後を追った

しばらく後、辺りに銃声が響いた
先行して、攻撃を仕掛けたスコールは、逃げ出した1人を追いかけ、1人廃墟の奥深くへと踏み込んで行った
 
 
 

 
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