(事件 SideL)
その緊急通信が割り込んできたのは、どうにか急ぎの仕事をかたづけた直後の事だった 荒れた画像に工場長の顔がアップで映っている 全システムダウン 彼が綴った言葉を聞いて、室内は静まり返った 表現するならそんな馬鹿なといったところなのだが 「……で、どこから連絡入れてるんだ?」 大映しになった工場長の背後に見えるのは、組み立てられていない車の一部の様に見える 「工場からに決まってるでしょうが!」 ………何が起こったんだって? 大統領室に集まっていた、補佐官や、秘書達は、誰からともなく顔を見合わせた 「ここをどこだと思ってるんです?」 憮然とした顔で工場長が重々しく言う 国営の工場 「優秀な技術者位いくらでもいます」 「……で、なんでシステムダウンを起こしたんだ?」 「解りません」 気を取り直したラグナの一言に、彼はきっぱりとそう答えた 「………………」 互いの間に長い沈黙が続いた 「優秀な人材がいるんじゃないのか?」 「ええ、人材はいくらでもいますが、こんな短期間で原因なんか解りません、まずは報告を最優先にしたんですが……」 徐々に映像の乱れが少なくなっていった 「ちなみに、どれくらいの時間が経過したのかな?」 「せいぜい10分かそこらでしょう」 キロスの質問に彼は投げやりに答えた 「それでどれくらいで復旧しそうだ?」 大丈夫みたいだな 余裕ある工場長の態度に、ラグナはそう判断する 「もうすぐ復旧できます」 突然画像が、笑みを称えた初老の女性へと切り替わった 「ですからこれから原因についても調べます。どうぞ安心して報告をお待ち下さい」 丁寧な老女の背後から、割り込まないで下さいという工場長の声が聞こえる 「解ってる事がひとつだけありますの」 品良く笑う老女に、ラグナはなんななくいやな予感を覚える 「それはなんですか?博士?」 「誰かが細工をしなければこんなことは起きないということですわ」 満面の笑顔で彼女がそう言うと同時に、画面の向こう側から何かが爆発するような音が聞こえた 「あら?」 のんびりとした老女の声が聞こえ、画像が乱れ工場長の姿が現れる 「……で、どうしますか?」 どうするかって言われてもな…… 「とりあえずシステムはそのままで、屋外待避」 面倒な事になったな……… 「復旧はしなくても………?」 「外からの操作が可能なようにはしてくれ」 相手の事も少し知りたいしな、それと…… 「捕まる前に逃げるようにしてくれ」 人質になんてなりたくもないだろ? 「解りました」 工場長の言葉と同時に、画像が乱れ、突然途切れた 「それでどうしますか?」 秘書の1人が恐る恐る質問した どうするも何も、な…… ラグナは工場が建っている方を疲れたように見やった |