英雄と泥棒
(終結 SideS)


 
油断をしていたのだろうか、案外簡単に倒すことができた
床に転がった男達をスコールが何も言わずとも職員達が縛りあげている、壁に開いた大穴から外へと出ていく者達もいる
「それで、リーダーは誰だ?」
気絶したままの男達が答える事は出来ないが、人質に取られていた人々は一斉に1人の男を指さした
確かに、3人の中でも偉そうにしていた様な気がする
スコールは男の元へと近づいた
男はすでに身動きがとれないように拘束されている
………これは、ワイヤーじゃないのか?
工業用の太いワイヤーが逃げられないよう手足を縛っている
「それが一番丈夫だ」
スコールの無言の問いかけを受け、側にいた作業員が重々しく宣言する
灯りの下で改めて見れば、工業用の機械が粉々に破壊されている
怒るのも無理はないな
怒りが納得できるだけに、スコールは明言を避けた
そして、男の頬を軽く張り意識を取り戻させる
周囲にはいつのまにか大勢の職員が集まっている
…………やりにくいな
目を覚ました男は、反射的にスコールを怒鳴りつけようとし、自分を取り囲む人々を見て、鋭く息をのんだ
「質問に答えて貰おう」
スコールは、脅すように近くに転がっていた薄い鉄板を喉元へと突きつける
ナイフの様にと迄は行かないが、薄く鋭い断面をしていれば鉄の板でも、皮膚を切る位は造作もない
男は顔を強張らせたまま、微かに頷いた

質問を終え、スコールは、男を引き渡した
男達とは別に、工場を狙った者がいる
あいつには何の義理もないと、あっさりした男の言葉は、状況を考える以上信じるに足りるもののように思えた
「その相手ならばラグナ君が捕まえたようだ」
職員に男をまかせ、工場の奥へ向かおうとしたスコールを聞き覚えのある声が、引き留めた
「さて、君にはこれから聞かなければならない事が出来た様だ」
キロスは何事もなかったかの様に男を連行して行く
脇を通り抜けていく複数の気配に振り返ると、工場の奥へと走り去る人々の姿が見えた
 
 
 

 
 
次へ そのときのラグナは?