英雄と夢想家
(平穏 SideS)
SeeDに対する依頼の数々
どういう訳か学園長に頼まれ、各地から寄せられた依頼の仕分けをしている
こんな事をしているということは、これらの仕事は俺には回ってこないという事だろう
確かに、依頼の内容を見ればたいしたことのない……
……俺から見れば取るに足りない出来事ばかりだ
平和な世界
平穏な時間
歓迎すべき事態なのは判っている
けれど………………
最近任務に就くのは、エスタがらみの事件の時ばかりだ
このままだと身体が鈍る
依頼書を仕分けながら、スコールは心の底でため息をついた
何も無い日々が続いている
その日スコールは、アーヴァインに誘われモンスターの捕獲に向かった
モンスターを殺す事無く、特殊な睡眠薬で眠らせ訓練施設へと運ぶ
ガーデン内の訓練施設は主に生徒達が使用する為、それほど強くないモンスター
専用車両に乗り込みガーデン近くの森へ向かう
ガーデンの門をくぐり音を立て、ゆっくりと車が動く
「あれ?」
アーヴァインが声を上げ、窓の外を見ている
「……どうかしたのか?」
「んー、あそこに居る人さ……」
指さす先に1人の男性の姿が見える
見た限りでは、その辺にいる、普通の中年男性に見える
「昨日も一昨日も居たんだよね」
ただの見学者じゃないのか?
魔女との戦いが終わって以来、ガーデンを見学しにやってくる人がかなりの数居た
もっとも、彼等が中に入れる事は一部の例外を除き無い
「ちょっと気になるんだよね」
車はガーデンから離れ、人の姿は見えなくなった
大量とまでは行かないが、必要数のモンスターを確保した帰り道
重量の増した車両は、進むスピードが格段と遅い
ガーデンに近づいた頃
「……まだいるよ」
先ほどの男が、ガーデンを覗き見ている姿が見えた
「いるな……」
しきりと様子を伺い、こそこそと、敷地内へと足を踏み入れる
そして、慌てて、敷地の外へと戻り、見物している風を装う
「怪しいよね?」
ほとんど音を立てる事のない、この車両の存在には気がついて居ないのだろう
スコール達の目の前で見るからに怪しい光景が繰り広げられている
怪しいというよりも、怪しすぎる
「ちょっと判断がつけにくいんだけどさ、昨日もあんな感じだったみたいなんだ」
昨日も、ということは、この光景を見せたかったという事なんだろう
どうする?というように、アーヴァインがこちらを見つめる
「……少し、調べてみよう」
怪しいとも言い難いが、何かが起きてからでは遅い
スコールは軽い気持ちで、その男の様子を探る事にした
次へ その一方で?
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