英雄と夢想家
 (異変 SideL)
  
 
 雲一つ無い青く晴れ渡った空
 ウォードは、空を見上げ
 何気なく、エスタ周辺の様子を見つめていた
 うん?
 視界の隅、微かに感じた違和感
 一度通りすぎた視線の先をゆっくりと戻す
 いつもと変わりの無い風景
 気のせいか?
 そんな思いが頭をよぎるが、どこか納得することが出来ず、ウォードは長い時間その場所を見つめていた
 十数分後
 はっきりと見えたのは、不自然なきらめき
 何かに反射した光の輝き
 人工物か?
 場所はセントラの大地、確かあのあたりには何も無かった筈だが
 ウォードは、首をひねりセントラの大地を見つめた
「船位は出入りしてもおかしくはない、けどな……」
 数日おきに確認される船の姿
 「よりによってセントラに出入りする人間が多いとは思えないな」
 キロスの言葉にラグナは頷く
 セントラに用がある人間って言えば、遺跡を見に行く観光客とか、セントラの調査に向かう学者とかそういった者が多い
 観光客はともかくとして、調査に向かう人々を乗せた船であるならば、短期間の内にこう何度も出入りしたりしない
 まれに、未だセントラに暮らす人々が、船で出かけ戻る事もあるがそれほど頻繁な交通はない
 「観光ルートからは、はずれてんだろ?」
 『あの辺で発見された遺跡は無いはずだ』
 そうなると観光客って可能性は無くなるよな
 観光ルートとして設定されるのは、安全が確認された場所ばかりになる
 もし、最近この場所に遺跡が発見されたとしても、発見されたばかりの遺跡はモンスターの巣窟である事が多い
 まして、つい最近エスタの事件があったばかりだ
 発見されたばかり所に好きこのんで観光に行く人がいるとは考えられない
 ………ん?
 「……この間の奴まだ見つからないんだよな?」
 遺跡に附随して思い出した出来事
 未だ行方が判らないとキロスが言っていたのはつい先日の事
 「私もその可能性を考えていた所だ」
 問題の地点の様子を探りにラグナロクが飛び立って数刻
 軍司令部と大統領個人宛に通信が入った
 そして、密やかにでは有りながら俄に軍内部が活発に動き出した 
  
  
   
  
次へ その頃のスコール
   |