英雄と夢想家
(牽制)


 
うねりを上げる機械の音
違法の手段により手に入れたガルバディア製のミサイルが詰め込まれていく
今はまだ警告
「ほんの少し手を抜いて差し上げましょう」
交渉相手が居なくなるのは、得策ではないもの
武力で無理矢理奪い取るなんて形を取るのはさけたいわ
そんな事をしたら、余計な人たちが出てくるのは眼に見えている
「これから徐々に、ですね」
不愉快な存在が不愉快な笑みを浮かべる
私はあえて、彼の言葉を無視する
「準備は整っているの?」
長い時間、この男のそばで助手の身に甘んじてきた彼へと声を掛ける
すべての準備は終わったの?
声に出さない問いかけ
男が騒音をまき散らすそのすぐ側で
「ええ、もちろん」
彼が力強く頷いた
「そう、それは良かった……」
心の底からの安堵
これでようやく…………
「何をするっ!!」
エスタの科学者へと突きつけられた無数の銃口
ようやく、あなたとお別れすることが出来るわ
「ここまで私達の事を手伝ってくださって本当に感謝してますわ」
口元へ突きつけられた銃に怯えて、一言も言葉を発しない
「でも、あなたのお力は必要では有りませんの」
青ざめた顔色で、私を見つめ、呆然と周囲を見回す
「ありがとう」
仲間の手が、エスタ人を捕らえる
「そして、さようなら」
引きずられて行く男が悲鳴混じりの声を上げる
「私が何をしたと言うんだっ」
あなたがしたこと?
そうね、様々な事をしてくれたわ
でも、何よりも………………

辺りが俄に活気づく
始まりの時が近づく
「目標はバラムガーデンとエスタ」
凛とした声が響く
「目標値固定」
人々の視線が一カ所に集まる
辺りに漂う緊張感
張りつめた空気の息苦しさに、私は小さく深呼吸をする
「攻撃を開始します」
もう、後戻りは出来ない……
不意に脳裏に浮かんだ言葉に、私は疑問を抱く
何を後悔するというの?後悔する事なんて何一つ無いのに
彼の指が、一つのボタンに触れた
その直後、巨大な振動が私達を襲った
 

 
 
ラグナサイドへ スコールサイドへ