英雄と夢想家
(危険 SideL)


 
厳重な警戒態勢が整った中
それは、濁った空が立ちこめる夕方、不意にやってきた
エスタ軍に敷かれていたのは、最高レベルの警戒態勢
そのおかげか、兵士達が異変に気がついたのは、早かった
セントラ大陸からの飛行物体の確認
確認がされると同時に、彼等は言い渡されていた命令に従い行動を起こした
報告するよりも早く
すなわち、彼等の自己判断に基づいた、防御態勢
エスタシティ及び国内の重要施設に銀色の幕が覆い被さる
「最大レベルの防御態勢整いました」
エスタに巡らされたのは
反撃する事の無い、守る為だけの力
機能が完璧に動作している事を確認した上で、彼等は報告をする為、通信回線へと向かった

突如空の色が変化した
ラグナは、政務の手を止め上空を見上げる
都市をすっぽりと覆った銀色の幕
…来たか……
自然、表情が変わる
同時に、人々へと説明をする為に、補佐官の1人が部屋を飛び出していった
気のせいでいてくれれば良かったんだけどな
室内にいた高官達が慌ただしく動き始める
ラグナもまた立ち上がり、執務室を退出した
ほぼ同時に
空にまばゆいばかりの火花が飛び散った
そして訪れる、鈍く重い音
同時に感じる沈み込む様な感覚
大地と空気が振動する
窓辺に走り、空を見上げる
銀色の幕の上に降り注がれる攻撃
大丈夫みたいだな
すべての攻撃を受け止めて揺るがない様子にひとまず安心する
「国民に念のため建物の中へ避難するよう呼びかけました」
足早に走り去ろうとした秘書官の1人が足を止め報告する
「ああ……」
彼は報告を終えるとまた足早に立ち去り
ラグナもまた、再び目的地へ向け歩き出した

数分後、攻撃が止んだ
人々がおそるおそる顔を覗かせ
空を見上げる
相変わらず、銀の幕がそこに存在している
ラグナの元へ、被害状況が報告された
現在の所、エスタが被った被害はまったく無し
ラグナ達政府高官が安堵の息を吐くと共に、活発に動き出す

それから、さらに数十分後
世界各地へ向け、一つの電波が発信された
 

 
次へ その頃のバラムは