英雄と夢想家
(分析 SideS)


 
操作された機械が森の中を進む
機械が映し出す映像がリアルタイムで表示され、データとして蓄積されていく
均一の間隔に植えられた木々の間をすり抜ける様に機械が進んでいく
「危ないっ!」
目の前に迫った木をぎりぎりの距離でかわすと同時に上げる声
……難しいな
実際機械が動く様子を見ることは出来ない
機械から見える映像のみで状況を判断し、操作を行う
見知った場所であるならばまだしも、実際には一度も見たことの無い場所を動かすのは至難の業だ
……………………
だいぶ慣れたとは言え、いつどこに激突してもおかしくない
「…………………」
データを取得している科学者が汗を拭う様子が見受けられた
「……………モンスター型にした方が良さそうだな」
ラグナの言うとおり、モンスターならば、多少行動に不自然な点があったところでたぶん問題はない
機械を操作し、森を抜ける
大きく旋回させ、船とはまったく関係の無い場所へと飛ばす
「あ、後の回収操作は私がやりますから」
言葉と同時に、動きがスコールの手から放れた

「やっぱり実際に見て見ないと細かい違いってのはわかりにくいよな」
最後の一区画を担当していたゼルが、ようやく手を止めた
確かに、周囲の様子から当りをつける事は出来たが、ここだと言い切る事が出来る所は無い
実際に見ていない事に加え、その場所を“調べる”事が出来ない事が大きな原因だろう
もっとも、偶然を装って、監視カメラの数台をすでに破壊している
実際に森の中へと進入することを考えて、まだ破壊をしていないモノについても、設置された位置とカメラの動きを確認済みだ
「それでは、解析をしますので……」
多少の事には目をつぶって、強引に集めたデータが解析される
数分の静寂
「出ます」
画面に森の一部がカラフルな映像として映し出される
「この辺は、洞窟の範囲からはずれている様です」
示されるのはとある一色
「そして、ここが地層が薄い事を示して居ます」
指し示される薄い色合い
「出口として機能するならこの辺が怪しいってことよね」
地表につながっている穴ならば、もちろんその通りだ
色分けされた森が次々と表示されていく
最終的に表示された地形には、数カ所極端に地層の薄い場所がある
「実際の森の風景は表示できるか?」
ここがどの位置なのか、正確に掴んでいないとミスが生じる可能性がある
スコールの言葉を受け、森の風景が表示される
「この辺のカメラもつぶした方が良いな」
きっと、作戦の邪魔になる
「後はどこがどの辺りにつながっているか、よね」
そこまで望むのは難しいだろう、が……
「ここまでの状況を報告して来る」
どうせラグナの事だ、この作業をやっている間に何か進めている
複雑な信頼を抱いてスコールは、ラグナの元へと向かった
 
 

 
 
次へ ラグナサイドへ