(呪縛)
エスタには一つセントラの事を示した事実が伝わっていた ―――あの地に集落をつくる事は出来ない 遙か昔、エスタ建国の時より伝えられる真実 実際に、過去幾度かセントラへと出現した小さな村は町へと発展を遂げることなく消滅している 長い間セントラを見つめ続けていたエスタだから知っていること セントラの遺産を引き継いだエスタだからこそ知っていること 点在し記憶を薄れさせながらセントラの大地へ住む者よりも知っている事が在る だからこそ、数年前新しく出来たその小さな村には注意を払っていた セントラ大陸の東側、海よりの土地に生まれた小さな村 村に住む人の多くは、ガルバディアからの移住者、そして昔セントラを去った者達の末裔 彼等からすれば、村を創ることは自然な行為だったのだろう 忠告を聞き入れることは無く小さな村はできあがった 村を囲った壁の内側で広げられる平穏な光景 村の中からは、子供達の笑い声が聞こえていた モンスターが現れる等と言うことは迷信だったという彼等の思いと モンスターの呪縛は効力を失ったのかも知れないというエスタの人々の思い 明るい方へと気持ちが流れかけていたそんな時の事 エスタ軍は、モンスター目撃情報を入手した 普通ではあり得ない程の数 遠く西の方角から、群れを成して来るモンスターの姿 ―――また、悲劇が繰り返される 彼等の脳裏を過ぎった思い エスタ軍は村人達へと、有りの侭の姿を伝えた 幾百ものモンスターの襲来の姿を 集団で行動するモンスターの話 そんなものが簡単に信じられる筈がない 村人達は彼等の言葉を本気にはしなかった それでも、幾人かの村人は“モンスター”の言葉に村を逃げ出しはしたけれど……… そうして訪れる悲劇 モンスターの群れに呑みこまれる村の姿 起こるだろう事態を予測し動いたエスタ軍の攻撃も村を守る事は出来なかった ―――村人のほとんどを守る事はできたけれど モンスターの襲来の後には何一つ残らなかった そこにあったはずの村は綺麗に無くなっていた セントラの大地は人の住む所ではない 幾度と無く繰り返された言葉 セントラに集落を作ることは出来ない 再び伝えられることになる伝承 モンスターの呪縛は、まだセントラの地を支配している |