英雄とセントラの謎
(モンスター工場 SideS)


 
セントラの西の端、巨大な山脈が連なるその半ばに隠されるようにしてその施設は存在していた
モンスターがやってくるという方向
様々な人から情報を集めてからこの場所へとたどり着くまでだいぶ時間が掛かった
スコールは偽装された岩壁を解除し、重い扉をこじ開ける
奥から湿った空気が吹き出してくる
ぼんやりと浮かぶ暗い光
極端な凹凸を見せる壁
―――ここ、なのか?
セントラの遺跡と聞いて思い浮かぶ建物とは随分趣を異にした光景に戸惑いが浮かぶ
入り口で少し躊躇った後、スコールは扉の中へと足を踏み込む
長い廊下を歩き出したスコールの背後で、暗い光が揺らめいた

中心部に広がっている広い空間
幾つもの機械の数々
幾つもの用途の解らない機械の数々と
あちこちに設置されたガラスケース
巨大なケースに閉じこめられた幾多の姿がある
見覚えのある生き物、未だ見たことの無いもの
複数の機械の間をつなぐコンベアーが作動している
調子の狂った音を立てる壊れた機械
流れていくコンベアの上に様々な物質
そして、排出される見知った生き物、の名残
―――モンスター製造工場
正式名称が何かは知る術も無いが、この場所を言い表すとすれば言葉はソレだ
ここはモンスターを生み出す為の場所
ここが、セントラに蔓延るモンスター達を送り込んだ場所、なだろうか
全てを滅ぼしていくモンスター達、どこからか現れるモンスター達
セントラを覆う、負の感情の源
だが、こんなモノを誰が作ったんだ?
建物の様子も、ここに残された内容も、今まで幾度か見てきたセントラの遺跡とは趣を異にする代物
セントラが残したものはどれもモンスターと敵対していた
施設内のあちこちに残されていた爆発の後
何者かによる破壊の跡
中途半端に残された破壊が誰の手によるものかはわからない
もしかしたら、破壊された機械がある程度修復したものなのかもしれない
機械が、モンスターに成るはずだった物体を吐き出す
腐肉の臭いをまきちらしたそれは、すぐさま何処かへ運ばれていく
グロテスクな姿に、吐き気がする
ここに残された何もかもが、嫌悪感をかき立てる
―――今度は徹底的に破壊すれば良い
スコールは機械を止める為、機械の群れの中へと足を踏み入れる
例え、モンスターを創り出す能力は失われているとしても、こんなもの、残しておける訳がない
不気味な機械の姿が大きくなる
足を進めるごとに感じる圧迫感
機械がスコールを捕らえる
耳障りな機械音
雑音に混ざった言葉らしき、音
本能が告げる危険に従い、スコールは前方へと走り出す
一瞬後、光線が降り注ぐ
鋭さの感じられない、攻撃
光が落ちた場所が、綺麗に消失している
まだかろうじて攻撃力は残っている
この施設がまともな状態で残っていたならば、破壊しようという試みは難しくなっていただろう
スコールは機械の正面へと立ち、手にしたガンブレードを強く握り、勢いよく振り降ろした

壊れた機械の悲鳴が上がる
仕掛けた爆弾が幾つもの爆発を繰り返す
崩壊の音
それと共に、辺りへと響き渡る耳障りな音
途切れる事無く鳴り続ける音は、狂った様な悲鳴
爆発炎上するか、崩れ落ちるか
いずれにせよ、壊滅される筈の施設をスコールは走り抜けていく
施設を抜けようと走るスコールへと左右から現れる機械と、モンスターのなれの果て
ガンブレードを振るい、スコールは無造作に敵を切り捨ていく
―――後少しで抜ける
スコールの目に、閉じた出口が見えると同時に、一つの人影が出入り口を塞ぐ
走り続けていたスコールの足が止まる
人影が、スコールの方へと足を踏み出す
正面から感じる威圧感
ゆっくりとその姿が見える
人の姿を摸した、モンスター
―――強い
直感が油断のならない相手だと告げる
初めて目にするモンスターの形
どんな攻撃をするか解らないが、形態からして基本は人の動きだと推測できる
遠く背後で爆発音が上がる
時間が無い
スコールはガンブレードを握りしめると、モンスターへと攻撃を仕掛けた

 
 
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