英雄とセントラの謎
(モンスター SideS)


 
ガンブレードの刃が、モンスターの身体を掠める
充分に踏み込んだ筈の距離が足りない
間合いを詰め、刃を振り上げる
さらに距離を縮め、振り下ろす
―――避けられた
当たることの無いギリギリの距離でモンスターに攻撃が当たらない
連続した攻撃が綺麗に避けられる
入り口まで後少しの距離で、足が止まる
放たれる殺気が強くなる
モンスターからの攻撃は、まだ無い
背後から追い立てるように爆発音が聞こえる
戦いを長引かせる訳には行かない
モンスターがどうするかは解らないが、スコール自身が施設の崩壊に巻き込まれたら無事では済まない
モンスターの背後に見える、地上への出口
多少の怪我を覚悟して一気に駆け抜けるという手段も在る
―――入り口が開いていれば
正面にあるのは閉じた扉
あの扉が、すんなり開くという保証は無い
倒すしか無いのか
無造作にモンスターが足を踏み出す
モンスターの周囲の空気が不自然に揺らぐ
モンスターへと集まっていく力の揺らぎが見える
あげられた手の先に黒い光が集う
次第に強く成る光、集められる力
ガンブレードを構え、じりじりと足を踏み出す
どのタイミングだ!?
スコールが行う小さな移動に、モンスターの攻撃先は変わらない
考えられるのは、変える必要もないほどの広範囲の攻撃
光が一際強くなる
悠然と構えるモンスターを前に、汗が滲む
スコールは、全ての神経を眼前のモンスターへと集中させる
―――あの攻撃は避けなければならない
攻撃の前兆、その瞬間を捕らえなければ、逃れる術は無い
糸が切れる寸前程の張りつめた緊張
一点に集う強い力に、空間が歪む
思うよりも早く、スコールの身体が反応を示す
空間に生じた僅かな違い
スコールがモンスターへ向け、一気に距離を詰める
黒い光が放たれる
渾身の力を籠めたガンブレードが、鈍い音を立てる
膨大なエネルギーが、物質を消失させる
両腕から全身へと襲う衝撃
背後から吹き付ける熱
視界が、黒い光に焼かれる
堅い感触、強い抵抗に逆らい腕を振り下ろす
光が、大きく揺らぎ熱量の向きが変わる
指が引き金を引く、幾度も、幾度も
左肩へと走る痛み、光が途絶える
音を立ててモンスターが倒れる
様々な衝撃に、スコールはよろめきながら数歩足を踏み出す
倒れ込んだモンスターの視線が向けられる
反射的に強ばる身体の前で、右腕が動く
起きあがろうとする身体
距離を置き、モンスターを見据えながら扉へと向かう
転じた視界の中に、モンスターの攻撃の結果が見えた
見えているのは、不気味な色をした空間
存在した筈の床も壁も天井も、その付近にあったはずの物質が全て消失している
とんでもない光景に、血が退いていくのが解る
よろめいた背中が、堅い扉へと当たった
 
 
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