英雄とドール
(招待 SideL)


 
「ドールからの招待状が届いた」
他国から招待状が届くこと自体は珍しいことじゃない
今までもいろんなところから招待状が届いた
エスタは長い間姿を隠し………まぁ、滅んだと思われていたようだから、現在の状況を把握したいと思うのは当然のことだって言える
ま、俺本人が行ったことってのはほとんど無いけどな
それはともかく
「ドール、ですか?」
補佐官の一人の言葉に、ラグナは招待状を手渡す
エスタが国交を開き、他国との交流を始めてから、一度もオファーが来たことのない国
「あの国はエスタを嫌っていると思ったんだがな」
あの国の主張はドール帝国はセントラの正当な後継者であるということ
そしてドールは、帝国が瓦解し世界の覇権からは遠ざかっていることを認めようとしない
………そんな国だと言われていたと思った
「嫌っているというよりは相手にしていない、といった印象でしたね」
一様に苦笑がこぼれる
世界では“セントラ”という名前は特別なものらしい
まぁエスタでも違った意味で特別な名前ではあるけどな
「ですが、招待状が届いたんですね」
ドールという国からの正式な招待状だ
彼等は一様に押し黙る
「現在のドールの情勢はどうなっている」
ここにきて突然エスタと交流しようと思うのには必ず訳があるはずだ
ドールの指導者が変わったとか
国内の状況に大きな変化が起こったとか
「確認してみますが………」
歯切れの悪い返事は、現在何の情報も持っていないことを示している
ラグナは再び手元に戻ってきた招待状を持てあそぶ
ドール国からの正式な書面であることを示す文様
刻み込まれたドールの国旗
ドール国内に何の変化もないというのなら、もう一つ考えられるのは、世界の変容
ラグナはさりげなく、書類をかざす
透けた光の中に浮かび上がる透かし
エスタの文字に似た文字が見える
そしてドールの特徴として伝え聞いた特徴の一つが欠けている
なんとなく解ったような気がするぜ
もちろんまったく逆の解釈だって可能性もある
「こいつを送ってきたやつが誰だか確認できるか?」
国の名での招待状だとしても、招待する事を提案した者、中心人物はいるはずだ
「確認してみます」
「判明したら、そいつの経歴もな」
その人物がどんな立場に立つものなのか見極めなければならない
真意もな
「そういや、返答の時期はいつだ?」
ラグナの言葉にあわてて紙をめくる音が聞こえる
「早いですね」
確認した奴の顔色が曇る
「いつだ?」
「ほぼ一カ月後、招待の時期も返答より2週間程度となっています」
国が国を招待するにしては確かに早いかもしれねぇな
「………そうか」
「それで、君は行くつもりかな?」
返答はもうわかってるんだろ?
キロスの言葉に返答するよりも早く
「スケジュールを調整しておきます」
秘書官が言った
 
 
 
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