英雄とドール
(依頼 SideS)


 
「ドールから護衛の依頼が入ったわ」
会議室へキスティスが幾つかの書類を持って入ってくる
「ドール?」
ゼルがあからさまに嫌そうな声を上げる
確かにドールという国にはあまり良い印象はない
SeeD試験がドールだったということもあるが、その後ドールに寄った際も良い扱いはされなかったな
「ええ、ドールから国賓の警護と護衛を依頼してきたわ」
国賓の護衛依頼?
「ドールには“軍隊”と呼べるものは存在していないためSeeDに依頼をしたんでしょうね」
依頼内容が書かれた書類が渡される
「って、自分たちじゃなく、相手側を護衛するのかよ」
依頼の内容は、相手側の護衛のみ
「自分たちに回すだけの金がないってことか?」
そんな声が上がったが
「ドールに限ってそれは無いでしょうね」
「ドールは金持ちだもんね」
ドールは小国だが、資金面ではガルバディアに劣らないだけの力があったはず
だからこそ、なおさら、一方にのみ護衛を依頼するというのが解せない
「よほど大切な相手なのか………」
「よほど危険な相手だってことか?」
護衛と称して、相手側の動きを見張る
そんな役割が振られているという可能性はある
「どちらの可能性も考えられるわ」
詳しい事は書類には書かれてはいない
「詳しい内容は聞いていないのか?」
「ええ、依頼料は割増になることを伝えているけれど、護衛対象がどこの誰なのかさえも極秘だわ」
依頼を引き受けてから詳しい内容を話すということか
「解っていることは?」
「護衛対象には決して害を与えないという誓約をとることは出来たようね」
「って、ことは、相手側を攻撃しようなんてことは考えてはいないワケだ」
「………少なくともそういうことになるでしょうね」
元から違約金を払うつもりでいるのなら、そんな誓約は意味をなさない
「詳しい事は全て依頼を引き受けてからか」
詳しい内容を知らないままに任務を引き受ける
そのこと自体は、SeeDである以上幾度も行われてきたことだ
だが、最近のガーデンの方針は変わってきている
「内容がわからない状況では、誰を派遣するか決める材料にも困るわね」
依頼の内容に応じて、その物事に対応できる実力の持ち主を選び出す
それは確かに重要なことだ
「返答はいつまでだ?」
時間があるのなら、情報を集める必要がある
「時間自体は随分あるわ」
護衛期間として指定されたのは1か月程度先
返答期限は2週間程度の時間
「調査するには充分な期間だな」
「それじゃあ調査をしてくる必要があるわけだけれど………」
キスティスの視線が、全員の姿を満遍なく見つめる
「………だれか適任者を推薦してくれるかしら?」
確かに、この中に情報収集をするのに適任な人物はいないな
何人かが顔を見合わせる
「あ、それじゃあさ………」
セルフィーが一人の人物を推薦し、もめることなくあっさりと調査員が決定した
 
 
 
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