(調査 SideL)
調査結果が届いた 招待することを決定したのはドール評議会のメンバー ドール建国時、セントラ時代からの貴族、と触れこみの奴等らしい セントラ時代から続く貴族、なんてのは眉唾だってのが、他国の意見だ 同感だって言いたい所だが、建国時から続く家柄なんてものはエスタにはごろごろしてる そのことを踏まえれば、一概に否定する訳にもいかねぇもんな ま、真相はどうであれ、ドールのお偉いさんだってことには変わりはない 評議会及び貴族会の中心人物は今も昔もカッシュグール卿って人物らしい 「大統領はドールにも行ったことがあるんでしたよね」 「行ったけどな、そんなお偉いさんと交流を深めるような出来事はさっぱりだぜ」 ドールなんてひとくくりで言っても、住んでる人間自体は様々だ 帝国時代からの奴もいれば、最近ドールになってからって住民だっている そういう意味じゃ、エスタの方が血が混ざることなく続いてるって言うんだろうな 添えられていた評議員メンバー達の写真に目を通す 「見覚えのある人物なんて………」 「いるわけないな」 お偉いさんと知り合うような機会はなかったし あり得るとしたら、向こうから近付いてきたなんて状況だろうけど、なぁ? 「間違っても彼等のような貴族が訪れる場所ではないな」 旅の間、ドールに滞在した時に訪れた場所 「しかたねぇだろ、そんな金もなかったんだから」 「確かに」 俺達のやり取りに、部屋の中にいた奴等が笑いだす 「笑いごとじゃねーぞ………」 俺はドールという国がいかに金持ちのための国なのか、金を持っていないことがどれほど大変なのかを話しだす 話しながら、もう一度写真をめくる 知り合いなんてのは当然存在しない 記憶のどっかの面影に似た奴も存在しない ………当然だけどな 「でも、もしかしたら、大統領の知らないところで見られていたのかも知れませんよ」 笑いながらの言葉 そしていつもの軽口の応酬 記載された貴族たちの経歴へと目を通す 「キーワードは“セントラ”か」 “セントラ” 全員に記述された言葉 よくここまで調査できたな、と感心するくらいの内容には、様々な箇所にその文字が躍っている 「セントラに関する情報を知りたがっているという可能性が考えられますね」 「………そうだな」 ドールは、過去に国自体に大きな変動があった 情報のほとんどは失われている そう思っていたんだが いや、今までの態度からすれば、事実情報のほとんどは残ってはいないと見て間違いないだろう ラグナは書き記されれた情報へと目を向ける ………なら、何が残っている? 「そういや、ドールが生まれた当初の記録なんてのはあったりするのか?」 はるか昔、セントラが滅びた直後辺りの記録 「………もしかするとあったかも知れませんが」 煮え切らない言葉に、少なくても彼等が目にしたことはない、あるという存在が記載されていない事はわかる 「そうか、それは仕方ないな」 後で探してみるか 今ではラグナしか存在を知らない場所 あることを知らない様々な――― 「まぁ、“セントラ”の事が気になっているってところで問題ないんだろうな」 彼等の興味は間違いなくセントラに関することだ 「最近様々なことが起きていますからね」 たちまち辺りの奴等が深刻な表情へと変わる 一口にセントラって言っても、その内容がどんなものなのかはわからないけどな 「話せるようなことなら話してやったっていいんだけどな」 呟いたラグナの言葉を 『話せることがない』 と受け取ったらしい彼等が乾いた笑いを立てる エスタに残されたセントラに関する記述 その殆どは話すことのできない内容 だが、 「ドールの奴等が何を言うかだよな」 もしくは何を知っているのか 何を伝えられているのか、だ 「セントラの遺跡を譲渡しろなんて言われるかも知れませんね」 面白がるような言葉を聞きながら、ラグナは調査書をポケットへとしまいこんだ |