英雄とドール
(下調べ SideS)


 
「なにか解ったことは?」
先日舞い込んだドールからの依頼
詳しい状況を知るために調査に向かっていたが、そろそろ返答期限のはずだ
「ええ、ようやく結果報告が届いたところよ」
「調べるのはなかなか大変だったようね」
だろうな、SeeDは戦う事を専門にしている
情報戦や潜入調査といったことはSeeDの仕事じゃない
おかげで、そういった事を教わったこともない
「それで、わかったのか?」
キスティスの手が、書類を差し出す
スコールは差し出された書類を開き目を通す
一般の国民もほとんど内容を知らされていないようだな
「どこから情報を仕入れてきたんだ?」
情報があったとしても、それが信用ならない筋からのものなら意味はない
「さぁ、それは企業秘密だそうよ」
「それで納得したのか?」
情報の正確さは、作戦を遂行する上で重大なことだ
「納得するわけがないでしょ」
キスティスが肩をすくめる
「………………」
話すつもりは無いのか
「裏付けが取れているのなら問題ない」
「それは保障しておくわ」
確認できたとされる情報をスコールは読み進める
ドール国内でも強い力を持った上層部からの指示
国内の警備体制に関する情報
「客を守るつもりはあるみたいだな」
厳重な警戒態勢、それに加えてSeeDの派遣か
「ええ、依頼された内容に嘘はないと考えられるわ」
確かに、だがそれと同時に危険が及ぶ可能性が高いと考えていることも判断できる
同様に彼等自身には大した被害が及ばないとも考えている
スコールは記述を読み進める
「………エスタ?」
招かれた相手として有力な国名
「そうみたいね」
「あの国はエスタと敵対しているんじゃなかったか?」
自分たちこそがセントラの末裔だとして、同じセントラの末裔だというエスタを嫌っていたはずだ
「敵対とまではいかないけれど嫌ってはいるようね、それと一般国民の感情は変わらないようよ、でも最近はいろいろと動きがあった様だから、話を聞こうと思ったのかも知れないわ」
「過激な奴等が実力行使に出る可能性があるということか」
エスタを認めない奴等が何かを起こす可能性がある
だから、自分たち以外に警護をつけるということか
「そうね、彼等はそれが起きることを警戒して依頼をしてきたと考えられるわ」
エスタに及ぶ危険、それは確かに重要なことだが
「自分たちに危険が及ぶことは考えていないのか」
エスタからの人間が誰になるのかはわからない
今までの事を考えればラグナ以外のやつが行く可能性の方が高い
だが………
「エスタの実情なんて知っている人はいないわ」
「そうだな」
確かにエスタがどんな国なのか知る者なんかいない
だが、知っている方からすれば
「エスタの方は自前でどうにかするだろう」
ラグナが来るとすれば、余計にそうだ
「確かにその通りかもしれないわ、けれどドールの方では知らない情報だわ」
キスティスの言う通りだな
「とりあえず、ドールからの依頼自体には裏がないことは確定したわ」
確かにその通りだ
「依頼を受けることに異論はないわね」
「………そう、だな」
その背後には様々な問題が予測されたとしても、確かに依頼自体には問題はない
その予測された問題も現実になるかどうかわからない
「それで、派遣するSeeDだけれど………」
キスティスが、ためらいがちな視線を投げかける
予測できない事態への対応は、それなりの実力が求められる
それと同時に………
「解った、俺が行く」
なるべくエスタの実情を知る者は少ない方が良い
「そう、それならドールに返事を出しておくわ」
キスティスがどこかほっとしたように言った
 
 
 
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