英雄とドール
(来賓)


 
国賓が訪れる
ニュースが出回ったのはわずか数日前のこと
ただ、ドールを訪れる国があるというだけならば、さほど気に留めることもなかった
だが、来国者はエスタの大統領だという
あのエスタだ
国民達の間では意見を言うものと沈黙を守るものの二つに分かれた
比較的好意的な声や批判的な意見
様々な意見が出たが、過激な声は聞こえてはこない
「何らかの企みが進行しているやもしれぬ」
聞こえてくるはずの批判的な声が聞こえないということは、計画がひそかに進行している最中である可能性が大きい
「SeeDの派遣を要請していて良かったと言えますね」
「確かに、その通りだ」
「それで、SeeDの方はいつ頃来るのかね?」
エスタからの来客は、明後日来国することになっている
「打ち合わせを兼ねて明日来ることになっています」
明日か
「ならば充分に話をする時間はあるな」
不穏な気配がある事を伝え警戒して貰う必要がある
「こちら側の警備はどうなっている?」
会談を設ける以上、我等が安全だとは決して言えない
「打てるだけの手は打ったと思いますが………」
万全の態勢だと断言はできぬか
「元々このドールには、戦うための力は存在せんからな」
用意されたのは、身を守るための最低限の力
ドールが生まれた当時はそれが最も身を守るための力だった
だが、今ではそれでは身を守れなくなった
「我等の使命を果たすまでは倒れるわけにはいかぬぞ」
事実、使命が果たされるかどうかはわからない
「SeeDにアドバイスを貰いましょう」
彼等にはエスタの護衛を依頼してる
依頼内容を捻じ曲げるわけにはいかないが、アドバイスを請う位ならば許されるだろう
「そうだな、彼等の意見を元に修正ができるよう手配をしておこう」
今後の対策を打ち合わせた後、メンバーが退出していく
「………伝えることができれば良いですね」
伝えることができれば
渡すことができれば
幾つもの言葉が残される
そうだ、伝えられればいい
………待ち望んだ方であればいい
壁に飾られた一枚の絵を見上げた
 
 
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