英雄とドール
(到着 SideL)


 
「それでドールの方はどうなってるって?」
ドールに向かう飛空挺の中、ドールに在住中の調査員からの連絡が入る
「着陸場所付近は厳重な警戒が施され、一般市民の立ち入りは制限されてはいるようですね」
当然といえば当然の行動だな
まぁ、それでも怪しいヤツがまぎれこんじまったりする訳だけどなぁ
「ああ、それと………」
一丁の拳銃を隠し持ったラグナの行動を確認した上で言葉が続けられる
「SeeDが派遣されているそうです」
………………何だって?
ゆっくりと振り返った視線の先で、楽しげな笑みとぶつかる
「SeeD?」
「はい、そうです」
満面の笑みだ
ってことはつまり
「スコールか?」
別にSeeDはスコールだけじゃないんだが、この様子を見るとそういう事だよな
「私が入手した情報によれば、彼が護衛として呼ばれた模様です」
「警備じゃないのか?」
「ええ、どうやら私達の護衛を担当する様ですよ」
「ドール側じゃないのか?」
問いかけながら、よくこんな情報を入手できたと感心する
「ええ、どうやら彼等は本気で大統領が訪れる事を歓迎しているようですね」
「安全に気を配る程度には、か?」
「いいえ、自分達の安全を二の次にする程、ですね」
そう告げた表情に、不思議な笑みが浮かぶ
「………………」
俺を歓迎している、か………
言葉としては間違っちゃいない
「っていうか、なんでそこまで詳しい情報が入るんだ?」
SeeDが派遣された迄は探れば解る
警備の為ではなく護衛の為ってのも、厳しいかもしれないがなんとかなるかもしれねぇ
だが、護衛の対象者が誰か、なんてことはよっぽど深く入り込まないと解らない情報だろ?
「SeeDから教えて貰ったそうですよ」
「………いいのかよ」
教えたってのは間違ってもスコールじゃないだろうが
「たまたま双方顔見知りだった為、お互いに情報交換を行った様ですね」
知り合いったってなぁ
漏らしちゃならねぇ筈の情報をそんな気軽に話しちゃ不味いだろ
「って、情報交換って言ったか?」
交換というからには、こちら側からも何らかの情報を与えていると言うことになる
「ええ差し障りのない情報を渡したそうですよ」
ラグナは自分の廻りへと視線を向け、
そういや、キロスは来てないんだったな
方向をずらしてウォードへと視線を向ける
『話して不味い事など、ほとんど無いだろ』
「まぁ、確かにそりゃそーだけどな」
こっち側からSeeD達へと引き渡せる情報の中に重要な情報なんて物は存在しない
「呼ばれて行く側だしなぁ」
ドールが何を望み、どんな出方をするのか
今はただそれを探っているだけの状態だ
「でもまぁ、安心してドールに乗り込めるってって事だよな」
『ドール側がそれだけ危険だと思っているって証だ』
身の安全は確保される、けどな………
「そこはどうにかなるだろ?」
ラグナの言葉にウォードがにやりと笑う
笑い返しながら、ドールの地で待つスコールを思い浮かべる
巻き込まれたりしなきゃいいんだけどな
「ドールに到着します」
窓の外に街並みが見える
スピードを落とした飛空挺がゆっくりと着陸していく
「………行くか」
ラグナの言葉に、全員が力強い返答を返した
 
 
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