英雄とドール
(出迎え)


 
飛空挺からエスタ独特の衣装を纏った人々が降りてくる
何故か神聖さを感じさせる不思議な光景
知らず息を飲み見つめる
そう多くはない一団が飛空挺を降り、人垣が割れる
中心から現れるのはまだ若い男
写真で確認していた人物と同じ者だ
「お招き預かりまして―――」
決まり切った挨拶が交わされる
「お出で戴き大変光栄に思います」
こちらも形式上となんら代わりの無い言葉を返す
いつも通り
他国の来賓が訪れるたびに繰り返されている手順
今までとなんなら変わりはないのだと、そう知らしめる為の行動
違っているのはさりげなく護衛についたSeeD
だが、それもさほどの違和感は感じさせない筈
エスタからの来賓を促し車へと乗り込む
緊張をはらんだまま、ゆっくりと車が走り出した

歓迎式典が開かれる
式典の手順等様々な準備は既に終わっているが、手順や警備についてはエスタ側へ説明の必要がある
SeeD達の意見に従い我等とSeeDは揃ってエスタからの来賓の元へと向かう
開かれた扉の内側、数人の人影
「今後の予定と警備の状況をお知らせに参りました」
告げた言葉に幾つかの視線が交わされる
「予定の方は私がお伺いします」
「警備の方はこちらで………」
名乗り出た2人の元へ私達はそれぞれ二手に分かれる
部屋の奥に居るだろう大統領の姿は見えない
部屋の奥を気にしながら、私は今後の予定をエスタの高官へと話す
歓迎式典が終わった後に設けられる対談の時間
その時間になれば幾つかの言葉を交わす事はできるだろうか
考えに引きずられるように時折、言葉に詰まり奥へと視線を向ける私をただ黙って彼が見ていた事には気づかなかった

華やかな音楽が奏でられる
「後で、時間をいただけますか?」
式典の最中、そっと話しかける
公式の式典が終わった後の個人的な対談
「………ああ」
幽かなためらいの後に返答が帰る
幾つかの行事が続けられ
賑やかに、歓迎式典は無事に終わった
 

 
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