(会談 SideL)
「わざわざ、お越し頂きありがとうございます」 公式行事が終わり、護衛等の余分な目と耳が退出したところで話が始まる 先ほど公式の会見を行ったのとは違う場所 彼等が通常使っているだろう落ち着いた色合い 過剰な装飾が排されたシンプルな部屋 だからこそ、中心に掲げられた一枚の絵が存在を主張している ラグナは絵を目にし足を止める 目が奪われる 不自然なほどの時間が経過した後、ようやく答えを返す 「いや、こちらも話をしたいと思っていた」 そうだ話をしたいと思っていた なぜ、接触を図ってきたのか ………その答えは半分出ているような気がするけれどな 進められたソファーへと、躊躇いながら腰を下ろす 先ほどの式典 先ほどの会談 その場に居た者でも、知らなければ気付かないだろ事 今、この時も……… 遠い記憶 そして、エスタ独特の礼法 “セントラ”時代のやり方 密かに示されたそれらの符号はこちらに対する問いかけだ 「本来ならばこちらから伺わねば成らない所ですが、我等が出向くよりは、こちらにお招きした方が誤魔化せるかと、勝手ながら判断させて頂きました」 丁寧な言葉の言い回しは 「………知って、いや覚えているのか?」 ラグナの言葉に、 「それが我等の存在意義なれば………」 微笑みを浮かべ、カッシュグールは肯定する 国交を交えてはならない それはエスタと関わりあうことを禁じる言葉 エスタが建国された当時、かつて“セントラ”が存在していたその時の取り決め それはドールに適用したものではなく、セントラとエスタの結びつきを悟られないためもの 厳密に言えば、ドールには関係のない事だ それを知っているということは、確かにセントラの人間だということだ 「存在意義、というのは?」 はるか昔の取り決めを知っているということ エスタの存在理由を知っているということだ それなら、彼等の存在意義とはなんだ? カッシュグールは飾られた絵画へを視線を向ける 「伝えなければならないものがあるのです」 飾られた絵画の中に描かれているのは、セントラの都 遠い記憶の中で見た風景 「伝わっている事は、多いのか?」
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