英雄とドール
(邸宅)
「この屋敷も、ドール帝国建設時からのもの、と言えれば良かったのかもしれませんが、これは比較的新しいものでして………」
“ドール帝国”は、幾たびか戦禍にに巻き込まれている
その度毎に、逃げだし、場所を変え
新たに建設された建物
ドール国民の中には、建物ごと移築した等と語る者も居るが
そんな事は在るはずがない
この様に巨大な物を持ち出せる程の余裕など無い
「それでも、手で運ぶ事の出来るものならば、持ち出すことも可能でしてな、見て頂きたいのはその中の一つという訳です」
一つなどと言ってはいるが、我が家が見せるべきものはただ一つのみ
他の家でも、実際の所渡すべき品がどれほど残されているのか判らない
「へぇ、それは楽しみだな」
エスタ大統領の言葉に、
「当家に伝わる品は、遠くセントラ時代から伝わる品でして………」
私は、さらに言葉を綴る
これは未来へ向けて、我等に託された物だ
「それではひとまずこちらへ」
大統領以下、この場を訪れた人々を案内したのは大広間
「しばらく、準備が整うまでこちらでおくつろぎ下さい」
この屋敷の造りを確認したいというSeeD達の仕事が終わる迄の間
隠し場所から、アレを運び出す準備が整う迄の間
その間この場所でお待ちして頂く事を承諾願った
「ウォード達も警備の方、頼むな」
スコール達SeeDは、家人の護衛に付いて貰うことが決まっている
別に俺自身に護衛なんてものは要らないが、あのじいさん―――カッシュグールの守りは必要だろう
『判った、どうせなら周辺の警戒も引き受けることにしよう』
人目を誤魔化す為とはいえ、ドール側の護衛もこっちの護衛も、ドール見学ルートへとついて行った
何かがあった際には絶対的に人数が足りていない
ま、どうにかなるとは思うけどな
屋敷内の確認が終わったんだろう、スコール達が戻ってくる
ラグナ達の応対をしていた家人達へスコールの視線が向けられる
「お待たせ致しました」
執事らしき男と共にカッシュグールが戻ってくる
にこやかに視線が向けられ、
「どうぞこちらに」
別の場所へと誘われた
応接室へと案内する
中に入るのは彼と私の2人だけ
他の方の入室は、私と彼の双方で様々な形で拒む事と成った
扉が閉じる
彼へとソファーを勧め、その向かい側へと腰を降ろす
「預かり物が在ります」
真実あなたが受取人であるのならば………
声に出してはならない言葉を私は喉の奥へと飲み込む
「預かり物?」
訝しげな声と表情
真実、解らないのか
それとも解っていながらそういった演技をしているのか
私には区別はつかない
そして………
いや、答えはすぐに出るはずだ
私は彼の背後に飾られた1本の装具と絵を見やる
「見て頂けますか?」
そして、出来る事ならば手に取って頂きたい
私はそれを示すために立ち上がる
言葉を発しようとしたその時、高い音を立ててガラスが割れた
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