英雄とドール
(戦闘 SideS)


 
「ここを動くな」
遠くから聞こえた銃の音に反射的に体が動く
昨夜ラグナから持ちかけられた取り決め
「っ待てっ」
スコールを引き留めようとする声が聞こえるが、
「ああ、こっちは任せておけ」
スコール達SeeDへとラグナが持ちかけたのは同じ屋敷内にいる家族を守ること
この場所はラグナとウォード達エスタの人間でどうにかなる
自信満々のラグナの言葉だ
招待は極秘で行いたいというドール側の意向
そして、危険に巻き込みたくはないというラグナ達エスタの意向
どちらも満たす条件は、この方法以外に手がない
「スコールっ」
一足先に駆け付けたセルフィがスコールを見つけ声を掛ける
「集まったか?」
「皆部屋中」
風神が広間だと案内された部屋の扉を開ける
「ここは任せる」
スコールの言葉に、風神が力強く頷き扉が閉められる
「ちょっと、スコールはどこ行くの?」
「外に回る」
「わかった、ここは私に任せておいて」
スコールは手近な窓から、外へと飛び出した

人数が多い
どこに潜んでいたのか
それとも、どこかから雇った者達なのか
襲ってくる人数は、当初予想していたものよりも数が多い
それに加えて
ドールの正規の兵士達が現れない
これだけの騒ぎだ、駆けつけてきてもいいころだ
時折スコールの手を逃れた敵が、室内へと侵入していく
「切りがない」
広範囲にわたる場所では、数多い相手に戦うのは不利だ
振るったガンブレードが甘く入る
浅い傷を負った敵は再び起き上がり、攻撃を仕掛けてくる
そして………
視界の片隅で見える魔法の輝き
スコールに向けられる訳ではない魔法は、癒しの魔法だ
埒が明かない
スコールは舌打ちとともに周囲に視線を巡らす
「スコール」
近くから風神の声が聞こえる
風神が握りしめた左手を掲げる
魔法を使うのか?
確かにこの状況を打破するにはまとめて攻撃をする事は効率的だ
スコールは、ガンブレードを握りなおすと窓へと背を向ける
扉が開かれる小さな音
力を込め、ガンブレードを薙ぎ払う
重い手ごたえと同時に、刃が届かなかったものが僅かに後ずさる
勢いよく開いた扉へと飛び込むと同時に魔法が放たれた
 

 
次へ その頃のラグナ