英雄とドール
(戦闘 SideL)


 
「ここを動くな」
そう言い置いてスコールが部屋を飛び出していく
遠くから聞こえてくるのは銃の音だ
個人の邸宅まで踏み込んでくる、なんてな
「っ待てっ」
護衛であるスコールを引き留めようと声をあげるが
「ああ、こっちは任せておけ」
ラグナの声にスコールは小さく頷くと静止の声を無視して飛び出していく
「なんという………」
「大丈夫だ」
青ざめた顔のカッシュグールへと声を掛ける
「ですが、護衛がその対象を放っていくなどっ」
確かにSeeDは、俺の護衛として雇われたんだったな
「ここには一般人だっているんだろ?」
個人の屋敷であるこの場所には、彼の家族が住まうはずだ
「それは………」
さすがにどうなっても良いなどと言えないんだろう、答えに窮し口ごもる
「悪いが、あいつの事は良く知っているからな、何かあったらそっちのほうに行くよう打ち合わせていたんだ」
ラグナは窓の外へと視線を向ける
「それはっ」
驚いたように視線が向けられる
「確かにこっちの方が危険かもしれねぇけどな」
ラグナは隠し持っていた銃を握りしめる
カッシュグールが息をのむ音がやけに鋭く響く
「それは………」
窓へと向けられた銃口が火を噴く
ガラスの割れる音
甲高い音にまぎれて重いものが落ちる音が聞こえる
「敵のお出ましだ、しばらく身を隠した方がいい」
少しばかり心許ない武器を構えた

まいったな
狭い室内
狭い入口
侵入してくる人数は限られている
一度に相手する人数が制限されているが
思ったよりも人数が多い
小さな銃では、戦うのにも制約がある
いい加減弾切れも起こしそうだしな
救いは、駆け付けたウォードが参戦していること位か?
「どうせなら、武器の一つでも持ってきてくれればよかったんだがな」
戦闘の中心から離れ、弾を込めなおしながら、ラグナは一言ぼやく
「………無いこともありません」
物影に身を隠しているカッシュグールが声を掛ける
戦闘の様子から視線を外し、ラグナは彼へと問いかけの視線を向ける
カッシュグールがある一点を示す
「当家に伝えられている品です」
手に触れることを禁じるようにケースの中に飾られた一本の棒
「あれは剣であると伝えられています」
一見するとまっすぐな棒にしか見えない
「ただ、あのケースを開けることがかないません」
真剣な眼差しが向けられる
「それじゃ、使えないな」
「いえ、あれもまたセントラの遺産なれば………」
開くかも知れない、か
「そうか………」
渡さなけらばならない品物
ラグナはケースに向い一歩踏み出す
「ありがたく借りることにするぜ」
ウォードの意識が一瞬こちらに向けられる
『行けっ』
ウォードの声に押され、ラグナはケースへと手を掛ける
ガラスに見えたケースを手がすり抜ける
ラグナの手の中に剣が収まる
軽く振った右手に合わせ、刀身が現れた
 

 
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