英雄とドール
(追撃)
爆発音が聞こえた
あれは魔法の発動する音
スコール達だろうな
魔法を発動することはあれでなかなか技術が必要だ
ドールにいる反組織が身につけている技術とは思えない
………何ものかの介入があれば違ってくるがな
音に驚き動きを止めた“敵”を無造作に切り捨てる
致命傷には至らないが、簡単には動けない傷
室内の奴等を一掃する
窓の外で慌てて逃げ出す姿が見える
「任せた」
ラグナの言葉にウォードが承諾の意を返す
逃げ道を確保するように立ちふさがる“敵”を切り捨て、家の外に飛び出す
飛び出した暗闇の中で手の中の剣が淡く光を放った
逃げていく気配を感じる
よほど慌てているのか上手く気配を消しきっていないが、聞こえない足音や薄い気配が、素人ではないことを教えている
ドールの人間じゃないみたいだぜ
少なくとも、今のドールに不満を抱いているドールの奴等じゃない
ラグナは気付かれないように後をつける
足が緩む
捲いたと思ったみたいだな
ラグナも歩調を変え改めて辺りを見渡す
空に浮かんだ日はまだ高い
こりゃ、ドール市内も制圧されてるかもしれねぇな
そんな事をして得する奴といえば、ガルバディアだろうか
だが、今のガルバディアにはそんな余裕はない
というか、今そんな事をしていられる余裕はない
ないんだが………
「どこにでも先走る奴ってのはいるからな」
ラグナの目に追っていた背中が見える
そろそろ、抜けるか
人通りの少ない高級住宅街からごく普通の人々が住まう場所へと区画が変わる
ラグナは、右手の中の剣を軽く振る
刃が消え去り元の棒状の形式に戻る
派手なのがちっと困りものか?
首をひねってみるが、それ以上変わる様子は見えない
目的の人間が一軒の古びた家の中へとはいっていく
「さて、どうするべきかな」
一人で突入したら流石に怒られるよな
ラグナは身を隠しながら腕組をして考える
「とりあえず連絡するか」
ラグナは連絡を取るために通信機のスイッチを入れた
「エスタの人間が騒ぎを起こしたら問題になる、SeeDに任せるのが一番だろうけどな」
勢ぞろいしたSeeDの姿を見て溜息を吐く
ここで俺も行くっていうのはやっぱやばいよな
エスタの人間だってだけではなくいろいろと支障が出そうだ
「ラグナ様に活躍されたら、私達の立つ瀬がないし」
セルフィの言葉にラグナはごまかすように頭を掻く
や、別に活躍するつもりは無いんだけどな
「セルフィはラグナの護衛にあたってくれ」
「了解」
スコールの指示にセルフィが元気に返答し、ラグナは肩を竦める
「我、突入?」
「ああ、風神は俺と一緒に来てくれ」
セルフィに安全な所まで戻る様指示を出し建物内へ踏み込もうとした瞬間
「………スコール」
ラグナは肩を掴む
スコールが手にした武器は相変わらずガンブレードだ
隠し持つ事の出来ないそれは、遠くからでも目立つ
その上、振り回して使うタイプの武器は狭い建物内で使用するには向かない
「ガンブレードは使い難いんじゃないか」
ラグナは手にしていた剣を差し出す
「剣だ、スコールなら使える筈だ」
「剣、だと?」
そういや、刃はしまったんだったな
いぶかしがるスコールに鞘を振り落とす様に言う
「わざわざ振り落とす必要があるのか?」
文句を言いながら動かした右手の中に刃が現れる
「まぁ多少は目立つが、誰も武器だとは思わないだろ」
ラグナの言葉にスコールは無言で頷く
ガンブレードを代わりに受け取り
「ああ、借り物だからな、無くすなよ」
歩き出したスコールの背中に、のんびりとした声を掛けた
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