英雄とドール
(騒動 SideL)


 
扉を遠慮なく破壊しスコール達が突入していく
派手だな
ラグナは軽く身を竦めると、ラグナは建物から視線をそらす
「んで、ここに居なきゃならない理由はないんだよな?」
ラグナはスコールと交換したガンブレードを肩に担ぎセルフィを促す
「さすがに、このままここにに突っ立ってると目立つと思うんだよな」
ガンブレード、なんていう武器は、だれがどう見ても武器にしか見えない
「あ、確かに見つかったら不味いよ」
ラグナの言葉にセルフィが慌てて歩き出す
「セルフィは残ってた方がいいんじゃないか?」
なにかあった時のフォローが必要だろ?
「でも、ラグナ様一人にする訳にはいかんし」
「こっから戻るだけだろ、一人だって問題ないぜ」
渋るセルフィを説き伏せ、ラグナはセルフィを残したまま、帰り道を歩き出す
セルフィに見送られ数歩足を進めたとき、突然火の手が上がった

戦闘の音が聞こえる
それと同時にラグナの背後で後悔するセルフィの声が聞こえる
「やっぱり制圧されてるみたいだぜ」
ラグナの言葉に、一瞬にして態度を変える
「ああやっぱり、助っ人が来ないからそんな気はしとったんや」
ドール警備兵達の詰め所らしい場所が勢い良く燃え上がる炎が見える
「だが、警備の奴等は全員出払っているんじゃないのか?」
突然の行き先の変更
だが、それは彼等には伝えられていない事柄だ
ここにいるはずの警備兵達は、当初の目的地に配備されているはずじゃないのか?
目を誤魔化すためにエスタの役人やドールの評議員は、当初の予定と鳴っていた行動を取り、今は何処かを見物中だ
おかしいな、見学先を警護しているのならあそこはもぬけの殻だ、あそこを攻撃しても意味が無い
「それ言うたら、何であの屋敷に攻め込んできたのかもわからないですよ〜」
「うーん、それも可笑しいんだよなぁ」
とりあえず、見てくるべきかも知れないな
ラグナはごく当たり前に一歩足を踏み出す
「あ、ラグナ様?」
何か思案していたセルフィが慌てて後を追ってきた

「やっぱりな、こんなことじゃないかと思ったんだ」
燃え盛る炎の中から聞こえていた戦いの音
それは全部作り物
燃え盛る炎さえも、一部は確かに燃えているが、その殆どは偽物だ
「ここをアジトにするなんて良く考えたよね」
セルフィが感心したように呟く
「考えたっていうより、必然ってやつかもな」
ラグナは指揮官らしき男に目を留める
あいつ、ドールの警護についていたよな
「あ、元SeeD」
セルフィの視線は、ラグナが目を留めた男に向いている
「SeeD?」
「うん、そういう触れ込みだったんだよね」
触れ込みってことは、事実じゃなかったてことか?
視線での問いかけにセルフィが首を傾げる
「ガーデンのデータには残っていなかったけど、そもそもガーデンの記録って古いモノがなかったんだよね」
困るよね、続けるセルフィーの言葉に頷きながら、男達の様子に目をやる
「ま、これで真相はどうであれ“敵”だってことは判明したわけだ」
ラグナは手にしたガンブレードを鳴らす
「ラグナ様には、安全なトコで待っててほしいねんけど………」
セルフィの言葉と視線を受け流しラグナは物陰を移動する
そろそろ動きがあってもいいころだと思うんだよな
時折取る連絡の先は、スコール達が侵入した先との通信だろう
「ほら、動きがあったぜ」
慌てだした男達の様子に、ラグナはその中心へと躍り込んだ

刃がかみ合う
“元SeeD”と名乗るだけあってか、他の奴等よりも腕は立つ
ちっとばかり扱い難いな
ガンブレードそのものは片手で扱うのが基本だ
だが、スコールのコレは、両手持ち用に微妙な修正がなされている
扱いにはコツがいる
ラグナと敵の間には微妙な間合いが開いている
一歩に満たない間合い
横合いから刃が迫る
ガンブレードの背で刃を流し、刃を振り上げる
「っ!!」
刃先が相手の身体をなぞる
布の裂ける感触が伝わってくる
刃から逃れようと僅かに後ずさる
ほんの僅かな隙
ラグナは一歩踏み込むと、勢い良くガンブレードを振り下ろした
 

 
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