(策略)
元SeeD そういう触れ込みだった者達の裏は取れない ガーデンに在籍していた元SeeDたちのデータは過去数年間のものしか残されていない スコール達現役SeeDの言葉はドールの役人達を沈黙させた 彼らが真実SeeDだという保障はどこにも無い つまりはそういう事だ だが、 SeeDだったという可能性がまったく無いわけではない ただし、元SeeDだったとしても、ドールの警備についたのは他の誰かの依頼ということになる ドールの情報を盗み取ろうとしたのか それとも、ドールに残されたセントラの遺物を狙ってのことなのか 本人達が口を割らなければ真実は分からないが 流石に部外者が首を突っ込むわけには行かない この辺りはドール兵士達の頑張り次第だ 手に入った情報は、差しさわりが無ければ伝えてくるだろう 捕縛された男達がドールへと引き渡される ドールの警備兵達が、身動き一つ取れない“敵”を引き立てて行く 彼等の姿が消えるのを見届けて、ドールの評議員がラグナたちへと近づいてくる 「貴方方には大変ご迷惑をおかけしました」 スコールが捕らえたという中心人物らしき男 アイツは、彼等の顔見知りだという 詳しい事は本人達は語らなかったが セルフィと風神がどこかから仕入れてきた情報によれば、ここ最近―――と言っても数十年は経っているそうだが―――台頭してきた家の子息らしい どうやら、自分達が彼等と成り代わろうとしていた様だが 真相は解らない きっと利用されたんだろうとは思うけどな 「そして、ドールの危機を救って戴きありがとうございます」 カッシュグールが丁寧に頭を下げる 背後に控えたドールの評議員がそれに合わせて頭を下げる 「いや―――」 別に何もしてはいない そう答えようとしてラグナは口をつぐむ ここで何もしていないと言っても白々しいだけだろう なるべく言葉が重くならない様に受け流す 「彼等のことは我等が徹底的に調べます」 強い言葉に、俺達は曖昧に頷く そして幾つかの報告が成された後、ラグナはスコールに預けたあの剣をカッシュグールへと差し出した 「お返しします」 セントラ時代の遺物 彼が見せたい物があるといったのはこの剣だろう カッシュグールは剣を一瞥し、そして緩やかに首を振る 「それはお持ち帰り下さい」 背後に控えた者達が、息を飲む気配が伝わってくる 「大切な物では?」 ラグナへと向けられる幾つもの視線 「それは“預かり物”です」 ラグナは目を伏せ、静かな笑みを浮かべる 「預かり物………」 「ええですから貴方へお返しします」 「俺が預けた筈はないんだけどな」 言葉が滑り落ちる 「貴方へとお返しする以上に適切な返却相手はおりません」 真剣に言われる言葉に黙るしか無い 「ありがたく貰っていく」 背後のざわめきに紛れて、一言言葉が告げられた |