英雄とドール
(取得物 SideL)


 
「持って帰ってもいいのか?」
ラグナの言葉に
『そりゃ、勿論いいんじゃないか』
ウォードは貰ったものだと気軽に答える
「まぁ、確かにその通りなんだけどな」
確かに貰ったものだが、問題なのは………
「ドールの方々が是非に、というものであれば持ち帰ることに問題は無いでしょう、少し調べさせて貰うかも知れませんが………」
僅かな沈黙の後呟かれる言葉に、ラグナは考えた上でゆっくりと頷く
「そうだな………」
エスタにもセントラの遺物はある
そして、これがあることでドールが月の涙の襲来を受けたことは無い
「ま、大丈夫だろうな」
これがあることで、悪い状況になることは無いだろう
『それにしても、ラグナが最適な人物か』
ウォードが意味ありげにこちらを見つめる
「そりゃ、俺じゃなくエスタって事だろ」
ラグナの言葉に、皆が押し黙る
「………ま、ここにあるからと言って、セントラ時代から彼等が受け継いだとはいえないしな」
預かり物って言う言葉
『預かり物と言っていたな』
ウォードの言葉に、ラグナが頷く
「ああ、セントラ時代から元々持っていたものではなく、いつかの時代に誰かに渡されたものなんだろうな」
『エスタの人間が持ち込んだのかも知れないな』
ウォードの言葉にラグナが頷く
頷きはしたが………
セントラの技術が使われた武器がエスタにあることは無い
………曰くありげなものなら別だけどな
不意に、声に紛れるようにして小さく囁かれた言葉が思い出される
“鍵”
どこの何の鍵なのかいったいどういうものなのかを口にすることは無かった
長い年月の中、失われたことなのか、もしかしたら彼等もまた教えられていないのかもしれない
そんな大切なものをわざわざドールに預けに行くことも考えられないしな
だから、きっとこれは………
ラグナは手の中の剣に視線を向ける
「なら、ありがたく持ち帰るか」
必要となる時が来るかも知れないしな

「大統領、帰国の準備が整いました」
「ああ、それじゃ帰るか」
様々に確認をすませ、最後の行事に向かった
 

 
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