英雄とドール
(セントラ)


 
セントラ
かつてこの世界に栄えた国
大規模な月の涙が起こり
その結果滅びてしまった国
ドールは、セントラが滅びる際
セントラを逃れた人々が創り上げた国
それは事実であり
ドール帝国時代の人々が、かつてセントラという国に暮らした人々の末である事は事実
そして
エスタはセントラの末裔ではない
そうドールの人々が口にするのもまた事実
彼の国は、セントラから別れた国
セントラを見捨てた科学者達が中心となって創った国
………それは一部事実ではあるが、真実ではない
かつて、ドールという国を創り上げた者達がセントラの民を託された様に
エスタは、セントラでは滅ぼすことの出来ない“月”への対抗手段を託された
それはセントラの民にも知らされていない極秘の願い
今と成っては、ドールに住む我等のみが知る願い
エスタに託された物
我等に託された物
どちらに託された物もセントラの未来

ただ一度の邂逅
エスタが役目を終えるその時まで、ドールとエスタが交わる事は無いだろう
関わりがある事が知られてはいけない
エスタはセントラを拒絶し分かたれた存在で無ければならない
双方共に認識している事実
「貴方の大伯父様より伝言が在ります」
帰国する大統領へと言葉を告げる
大統領の動きが制止する
「大伯父?」
「ええ、ずっと以前に伝言されていました」
貴方のお婆様の兄に当たる方です
その言葉に僅かに考え込む仕草をする
「………それで、伝言ってなんだ?」
端的にその伝言の内容を伝える
今はもうバラムの土地となったその場所
人目に付くことのない大陸の端
その場所で“待つ”という言葉
向けられていた視線が一瞬鋭さを増す
「………解った、わざわざありがとうな」
その言葉を残して、エスタからの客人達はドールを去っていった

しばらくして、セントラ時代の建物が見つかったと世界に報が流れた
 
 

 
 
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