(調査 SideS)
「依頼が来てるわ」 キスティスの言葉に、自然に皆が集まってくる 別に依頼が珍しい訳では無い 以前よりも数は少なくなったとはいえ、モンスター退治や護衛などガーデンへ依頼される仕事はそれなりにある だからこそ、わざわざ依頼が来ているとキスティスが言う事自体が珍しい 「どんな依頼?」 だからこそ、興味を引かれた友人達がキスティスの周りに集まっていく 「それが少し変わっているのだけれど」 そう言ってキスティスが差し出したのは一枚の依頼書 キスティスの周りに集まった者達が先を争う様に手を伸ばす 少しの攻防戦の後、紙を手にしたのはセルフィ 「んー?モンスター?」 セルフィの言葉に、何人かががっかりしたような声を上げる モンスター討伐の依頼なら別に珍しい事じゃない 最近では、その手の依頼が依頼の大半を占めている 「モンスターなんざ、珍しくもなんともねぇだろーがっ」 サイファーが吐き捨てる様に言う 今回はサイファーの意見に賛成だな 少し離れた場所でスコールは彼等の様子を窺う 「セルフィ、あなた依頼の内容を良く読んで」 キスティスがため息を交えながらセルフィが持ち書類を指さす 「内容?」 キスティスの言葉に、全員がセルフィの手元を覗き込む 「あれモンスターの討伐じゃないんだ」 セルフィの声にスコールは作業の手を止め、彼等の方を注目する 「ええ、依頼はモンスターの実態調査よ」 実態調査? 「実態っていうよりも、生態調査なんじゃない?」 セルフィの言葉にスコールは立ち上がり、彼等の元へと近づく 既存のモンスターならば、その性質や習性は詳細に記録されている筈だ わざわざSeeDに調査を依頼する必要は無い 「新種のモンスターでも見つかったのか?」 興味深そうな声 「それが良く解らないから調査して欲しいんですって」 キスティスの視線がスコールへと向けられる 「解っている事は無いのか?」 「ん、一応目撃証言はあるみたいやね」 スコールの言葉にセルフィが報告書を手渡しながら答える 書き記された内容は近頃モンスターが出没するというもの それ自体は大して珍しくもない出来事 続けて書き込まれた記述 モンスターからの被害 「被害が軽すぎるな」 人にたいした害を与えないモンスターも存在はしている 乗用として使われるチョコボのその一種だ 「人に対する被害はそうみたいね」 キスティスの言葉に列記された文字へと目を通す 「物質的被害?」 「ええ、村を襲ったモンスターが機械なんかの道具を持ち去るって言うのよ」 人が使う道具を欲するモンスター そんな存在は聞いたことも無い 「それってさ、モンスターの振りをした人間じゃないよね?」 「その辺りの事も入念に調べてみて欲しいようね」 対象がモンスターなのかどうかすらも解らない依頼 「誰が空いている?」 依頼先はバラム辺境の小さな村 辺境とは言っても大してガーデンから離れている訳じゃない 依頼を受けたのなら、明日にでも相手先に行く必要があるだろう スコールの言葉に友人達が視線を交わす 「基本的に私達は全員手が空いていると言えるわね」 確かに高ランクのSeeDが必要な仕事の依頼は最近はなかなか入っては来ない ガーデン内部の仕事さえ折り合いが付けば、誰でもすぐに出かける事が可能だ 周囲から期待に満ちた視線を向けられる 「………誰が行く?」 スコールの問いかけに複数の返事が勢いよく返った |