英雄と少年
(報告 SideL)


 
「モンスターが出なくなったらしい」
いつもの様に執務室での仕事の最中
僅かに休憩の時間に突然キロスが口を開く
「………モンスター?」
「バラムの田舎の村に出るという、アレだ」
そういや、そんな話もしてたな
「出なくなったってのは、退治されたってのとは違うよな?」
それならそう言うはずだ
出なくなったと言うのなら、その言葉通り、モンスターはいるのに出ないということ
「無論、どうやらSeeDがつくのと同時に現れなくなった様だな」
SeeDが行くと同時に?
「そりゃあ………」
それは、モンスターがただのモンスターではないと暴露してる様なもんだよな?
「それすらも計算、ということもあり得なくはないが………」
「考えにくいだろうな」
だが、だとしたらモンスターには人の手が加わっていると考えて間違いないな
「バラムの中に不審な動きはあるか?」
ラグナの問いかけに補佐官の一人が動く
「それも考えられなくはないな」
キロスが納得した様に頷いて見せる、が
「ってことは、何も出てこないか?」
こんな思わせぶりな態度の時は逆にはずれだ
「いや、まだ私もそこに手はつけてはいないが、どちらかといえばガルバディアかと思ったんだがね」
ガルバディア
確かにあの国なら何をやってもおかしくはないけどな
「わざわざバラムまで出張るか?」
鉄道のお陰で陸続きの様な錯覚を覚えるが、実際は海を隔てた別の大陸
しかも、位置的にガーデンを越えて行かなければならない辺境だ
「海沿いなら完璧だと思うのだがな」
まるで逆の方向だな
「近いというのなら、他にも候補が出ますね」
言葉と同時にバラムの情報が目の前に現れる
「………あながちはずれではない様だな」
「最近のバラムガーデンはうちと仲が良いって思われているからな」
示された資料には、バラムが再び“軍”を作ろうとしているという情報
「結構進んでいるな」
「計画は終わり、実行に移っているようだな」
さすがにまだ人を集める所までは言ってはいない様だが、外側は色々と出来上がってきている
「ガーデンの立場も難しくなりそうだな」
「………そうだな」
ガルバディアと同じ道を辿る危険性はある訳だ
口元に微かな笑みが浮かぶ
「ま、それは今考えても仕方がないよな」
「ふむ、確かに今考える事ではないな」
誰かが調べたらしいバラムの状況が次々と現れる
「今の所モンスターを使った実験をしている様な感じは無いよな?」
「そう断言は出来ないな、何をしているのか不明な所は様々ある」
確かに何かが動いている事は解るが、それが何なのかは記されていない箇所も多い
「ま、そりゃ仕方ないよな」
他国の情報だ、いくらなんでもそう簡単に情報を掴める筈がない
「現地に人を派遣してみるかね?」
キロスが近所へ使いにでも出す様な軽い口調で言う
モンスターの背後に見え隠れする人間の姿
「どちらにしろ、政府の仕業にしては詰めが甘いよな」
SeeDが乗り出してきたことがイレギュラーだったとしても、誤魔化す方法は幾らでもあったはずだ
「“人”が関わっている事は間違いない気がするがね」
モンスターを操る人
モンスターを利用する人
過去にもそう言った人間は複数居た
「単純に利用しているだけならいいんだけどな」
モンスターを利用するその利用の仕方も問題ではある
だが、それよりも………
深くため息を吐き出し
「どっちにしろ気にはなるよなぁ」
誤魔化すように言葉を繋げる
「なら、やはり人を派遣するとしよう」
気が付かない振りをして、言葉を繋げる
「おう、ありがとよ」
ラグナの言葉にキロスは偉そうな笑みを見せた 
 
 
 
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