英雄と少年
(調査員 SideL)


 
「了解しました」
告げられた”仕事”の内容に小声で了承の意を示す
私へと幾つかの指示を伝え通信が切れる
バラム国内の調査
辺境の地で目撃された普通とは違うモンスターの話
事態の調査にSeeDが現れた途端、姿が見えなくなったという不審なモンスター
背後を疑うな
そう言う方が無理だろう
調べるべき事柄は複数ある
バラムで進行中の“軍”に関するもの
用途のはっきりしない多額の金の使われ道
存在しない筈の施設の存在
それと、モンスターの行方
“国家”に関する事を調べるのにはそれなりの時間が掛かる
時間をかけずに調べられるだろう事はモンスターの行方、だが
あの辺りは、人が行けば目立つ
バラムという国は内陸の方へ、奥地の方へと進めば進むほど何も無い
その辺りに住む者や知り合いでも居る者ならばともかく、一般の旅行者は滅多にそんな所までは行かない
お陰で何もしなくとも注目を浴びる
何かを調べる為の行動を取ることは勿論
ただ話を聞くだけでもすぐに噂が駆けめぐる
姿を消したモンスターが事実モンスターならば、噂されようと何も変わりはない
だが、背後に何者かの存在があるのならば、噂になる事は歓迎出来ない
SeeDから身を隠した様に、さらに別の場所へ潜む可能性がある
疑問を感じさせず、警戒も起こさせずにその場所へと融け込む必要がある
まずは、その地へ行くことに正当な理由があること
村の周囲を歩き回る事が当然だと思われなければいけないということ
モンスターが出るという場所に護衛もつけず一人で向かう事も不審がられてはいけない
………もっとも、その件に関しては護衛という他の者を配置するという事も可能だ
理由が必要だ
幸い、長年語り実績を積んできた肩書きはある
それと上手くつなげる為の理由付け
唇に左の人差し指を当てながら、考えを巡らせた

モンスターの出没が話題となったのは、それが珍しい特徴を持っていたからなのか、モンスターの出没が少ない場所だからなのか
小さな村の背に森と険しい山並み
身を隠すには丁度良い場所があり
食べ物にも困らない
モンスターの生息地としては悪くない条件
この土地ならモンスターの出没も頻繁に会って可笑しくはない
この地にモンスターがいないとなれば定期的に討伐されているのか
それとも、通常のモンスターを駆逐する程のモンスターが住んで居るのか
“強いモンスター”と言えば、バラムには一種他とはレベルの違うモンスターが住んでいる
………アレが出るのなら、村を築いておく事が不可能だ
不自然にならない様に村の方を伺いながら、周辺へと足を向ける
森へと続く道
山へと続く道
あまり使う人がいないのだろう荒れた道
距離を置いて村の周囲を歩く
幾つか残る足跡
作られた道が幾つか
そして、幾度か行き来した痕跡のある小さな足跡
足跡は山の麓方へと続いている
一応、行ってみるか
幾つかある気になる箇所の一つとしてその場の事を記憶した
 

 
 
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