(風神 SideS)
今回の任務は、バラム辺境の村の周囲を調査すること それもSeeDが調査を行っている事を悟られないよう ただの旅行者の振りをすること Seedであることを悟られないようにする そのことは自体はそれほど難しいことではない、と思う けれど普通の旅行者の振りをしろというのは、難しい 何か観光にる様なものでも在れば話は別 でも、あの辺りには見るべきものは何も無い 普通の旅行者はあんな辺境の村に旅行には行かない 旅行者の振りをすることが、疑われる要因 漸く見えてきた村の姿に、風神はため息を吐く 要は、疑われなければいい 周辺を散策しても怪しまれなければ問題ない 怪しまれないのなら、旅行者では無くとも良い むしろ、旅行者じゃない方が良い 「着いたよ」 運転手に礼を言いバスを降りる 道の先に遠く集落が見える 本来の目的地はあの場所 けれど、今の私の目的地はここ 目の前に佇む一軒の建物 掲げられた表札―――看板を目にして階段を上がる 扉に備えられたノッカーを叩く 近くに人の気配は無い 不自然にならない程度の時間を置いて、今度は呼び鈴を押す 家の中で軽やかな鈴の音が響く 人の気配が近づいてくる 扉の向こう側に立つ人の気配に 緊張した顔を作り帽子を脱ぐ こちらを伺う視線 ゆっくりと扉が開く 開いた扉に慌てた振りをして一歩位置をずらす 「ようこそ、お待ちしていたわ」 穏やかな表情を浮かべてご婦人が両手を広げて立っている 「初めまして、よろしくお願いします」 緊張と期待が入り交じった顔 ………に見えるだろう表情を作って、挨拶をする 「あらあら」 彼女の手が、手に触れる 「さあ、遠い所疲れたでしょう?」 疑うことも無く家の中へと招き入れる腕 「おじゃまします」 小さく行った私に満面の笑顔が返ってきた 深夜
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