英雄と少年
(買い物 SideS)
バラム辺境の地
問題の村が遠目に見える場所でスコールは足を止める
前方にあるのは見覚えのある人影
こんな所まで………
無意識の内にため息が零れ落ちる
様子の可笑しいモンスター
不審な言動が見られる村
情報が何処まで出回っているのかは解らない
解らないが“普通”ではない状況なのは確かだ
スコールはラグナへと近づく
「何をしてる?」
「散歩、………お前は?」
振り返ることなく答えた声
こんな所まで散歩に来る馬鹿がいる筈は無い
適当な言い訳
「………買い物だ」
だから、同じ意味の言葉を返した
村と周囲の様子を窺う
何の変哲も無い田舎の村
周囲に誰かがいる様な気配もしない
ここの情報をつかんだのはエスタだけだということだろうか?
それとも、大して重要視されていない?
その辺りの事はまだ判断が付かない
「そんなに騒ぎになっているのか?」
「いや、今の所騒ぎにはなってねぇな」
なら、ここに注目しているのはエスタ―――ラグナだけだということか
「………何故、あんたがここに居る?」
わざわざここに来た事の意味
それは、聞いても無駄だろう問いかけ
時折こうやって自ら動くラグナに何かの理由がある事は解っている
「気になったからな」
返事はいつもと同じ
手の内を明かすつもりは無いということか
この件に対して、何か心当たりはあるのか
何処まで知っているのか
問いただしたいことは山程ある
口を開きかけて、閉じる
ただ聞いた所で答えたりはしない
答える言葉は曖昧で
いつのまにか聞きたい事をはぐらかされる
聞くよりも、見た方が早い
同じ場所に居る限り、目にすること体感することを誤魔化すことは出来ない
「………行くのか?」
この状況下で行く筈はないだろうが、村を伺うラグナの様子に念のため問いかける
「いや、近づかない方が無難なんじゃないか?」
閉鎖的な村
部外者の存在は、そこに居るだけで目立ち見張られる事になる
「村の様子もあまり良くはないんだろう?」
遠目にも、村の中が落ち着かない様子は感じられる
時折、村の方から注意を促す声が聞こえてきている
「スコールは行くのか?」
村にか?
モンスターが出たという情報は聞かない
村には今セルフィ達が待機している
何か―――モンスターが出没するような事があれば、三人で充分対処が出来る筈だ
今わざわざ村へ行く必要は無い
モンスターの行動や
村人の態度で気になる事はある
「………村に行くのは後だ」
だが、急ぐ程のことじゃない
ラグナが森の方へと進路を変える
迷うことなく森へと向かう姿に、風神からの報告を思い出す
風神が出会ったという人物は、エスタの調査員で間違いないな
スコールは山の方へと一瞬視線を向けるとラグナの後を追う
「………………」
森へと足を踏み入れた所で、ラグナが始めて振り返った
次へ その頃のラグナ
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