英雄と少年
(扉 SideL)


 
SeeDがモンスターを討伐した
バラム国内でふらふらしていたラグナの元へエスタから連絡が入ったのは先日の事
報告を聞いてすぐラグナは村へと向かい
今、森中を歩いている
手がかりは、子供と遭遇した場所
それと子供の証言
子供が居たという場所
“まっすぐ来た”という証言
まっすぐ行けば問題の場所へたどり着く
………そういう訳にはいかない
子供の話を聞いてまっすぐ向かった先に何も見つからない事で気のせいだった
そう思わせたいって所か?
ラグナはまっすぐから左右にずれた範囲を歩き、それらしいモノを探す
似たような木の多い森の中
こんな場所では、目印となるモノを簡単に見つけ出す事は出来ない
こんな場所で人は、まっすぐに歩く事は出来ない
まっすぐ歩いているつもりでも、少しずつずれていく
周囲を警戒して歩く大人でもそんなもんなら、辺りを見ないで走った子供なら当然まっすぐなんて進める訳がない
「当たり、だな」
一見すると何もない場所
だが、良く見れば岩肌にカモフラージュされた扉が見える
そういや、モンスターを倒したっていう場所も石があったんだったか?
近くは無い場所から観察していたというSeeD達の様子
報告された戦いの様子
そして在る程度の調べが付いたバラム政府の内情
バラム政府の関係者がこの森へと足を踏み入れた事は無い
―――なんらかの調査をしようとこの地に向かった事はあるが、それ以上の発展は見られない
―――バラムがなんらかの実験を始めている事は確かだが、“今”はこことは関係がない
提出された報告は隠されたこの施設がバラムのものでは無い事を示している
誰か個人が作ったものかもしれない
その可能性は何時だってある
でもまぁ、個人所有ならそれほど面倒な事にはならないはずだ
“ラグナ”が居る事に特別な意味を持たれる事は無い
「んで、コレはどうやったら開くんだ?」
扉が在る事は解った
前に立てば開くって訳でも無く
扉を開ける為の取っ手なんかも見あたらない
これが扉である以上、何かをすれば開くんだろうが………
ものは試しで、右手で扉を押してみる
冷たい感触を感じるのと同時に、一瞬の光
小さく機械の立てる音がする
とっさに手を離し、扉の前から離れる
………………
息を殺し扉を伺う
数分の時間が経過しても扉に変化は見られない
「攻撃はしないみたいだな」
危険が無いってのはありがたいが
こっそり入るってはの不可能ってことだよな
ここ以外にも入り口がある可能性はある
だが、他の入り口の手がかりも無い
それにそっちも同様の仕掛けがしてあれば、結局は同じだ
「呼んだら出てきたりはしないよな?」
呟いてもう一度、今度は両手を使って扉を押す
返ってきたのは先程と同じ反応
幾度か同じ動作を繰り返す内、違った反応が返ってきた
 
 
 
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