英雄と少年
(施設 SideS)


 
狭い隙間を抜け出す
たどり着いた先は、先程までとは違った人工的な建物の中
足元には複数のモンスターの足跡が残っている
「間違い無いな」
モンスターがこの場所へ逃げ込んだという予想は間違ってはいない
ここが本物のモンスターの巣穴
足跡の先に視線を向ければ開け放たれた扉が見える
スコールは手にした武器を確認し、扉の方へと歩き出す
足を進めるごとに目に入ってくる光景
崩れ落ちた壁
片隅でボロボロになった何かの機械
ここは、いつの時代のものだ?
壁に刻まれた文字らしきものを指でなぞる
少なくともバラムのものじゃない
幾度と無く見る機会のあったセントラのものとも違っている
長い間使われた形跡のない施設
見覚えの無い道具
建物の中には人の痕跡は残されていない
人に会った、そう言っていたな
森の中で保護した子供
その建物とここは違うものだろうか?
崩壊した建物の中を足跡を追いながらスコールは進む
モンスターの足跡は躊躇うことなくまっすぐに伸びている
開いたままの扉に視線を向ける
壁や床に刻まれた、破壊の跡
故意に壊された機械
破壊の跡は人の手によるもの
遥か昔
ここが動いていた頃
ここは、何者かに襲われた
………何時の頃だ?
バラムの歴史には争いがあったことを示す、記述は存在していない
………ここは個人の持ち物で、歴史に残るまでもない小規模な出来事だったのかもしれない
破壊の跡を見ながらスコールは奥へ―――もしかすると入り口のほうへと足を進める
足が止まる
足跡が進む先に在るのは壁
行き止まりに見える場所
「続いているな」
壁との間で半分に切れた足跡
この壁自体が扉になっているんだろう
スコールは壁に手を掛けた

空気が違う
隠し扉の先に開いた空間を前に足を止める
さっきまでいた場所と違いここは空気が動いた気配がある
視線を落とし確認した床の上にほこりは積もってはいない
辺りを警戒しながらスコールは室内へと足を踏み入れる
生き物の気配は、無い
だが、最近まで生き物が居た気配がする
部屋の中心で足を止め、改めて周囲の様子を伺う
きちんと部屋の隅にまとめられた道具
その中に見覚えの在る道具がまぎれている
今、普通に手に入れることの出来る見覚えのある機械
村から盗まれたものか
これでモンスターの“巣穴”から見つかった道具はフェイクだということがはっきりした
スコールは置き去りにされた道具を手に取り確認する
綺麗に磨かれ、使われた形跡が残っている
獣型のモンスターが使ったとは考えにくい
なら、ここに居たという人が使っていたんだろう
………………
盗んできたのがモンスターで使っていたのが人だったとするなら、ここに居たという人間がモンスターを使って盗ませていた?
考えにくいが、ありえない訳じゃない
昔から人に友好的なモンスターは存在している
「ここには居ないようだな」
面倒ごとを避けて場所を移したのか
部屋の隅に別の場所へと続く扉が見える
スコールは後を追うように扉を開いた
 

 
 
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